S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~

当然の事ながら、彼女も年末のスケジュールのため仕事は忙しい。
ほとんどの時間をオフィスで過ごしているから、本当なら俺の世話など焼く暇はないはずだ。

そもそも、彼女は仕事の熱心さと比べると、家事があまり好きではないようで。
自炊もほとんどしないし、部屋は必要最低限に片付いているレベルだ。
(俺も右に同じなので、特に咎めるつもりはない。)

ただ、健康のために、休みの日に大きな鍋に一週間分まとめて季節の野菜でスープを作ることは欠かさない。
元々、全く料理をしない娘に、せめてこれだけはと母親が熱心に薦めたらしいが。
驚くことに、それをお総菜やコンビニ弁当と一緒に食べているだけで、彼女は滅多に風邪を引かなくなったという。

結局、彼女は仕事を休まないようにするために、この野菜スープ作りを続けているというわけで。
どこまでも、仕事に関しては熱心だ。

そして、今日は俺の体調を心配して、お裾分けをしてくれたのだ。

素直に嬉しいと思う。
洗濯物が片付いたことよりも、温かい食事が取れたことよりも。
時間がない中で、家事が苦手なのに、彼女が俺のことを考えて色々してくれたことが。


彼女を仕事人間にしたのは、他でもない俺なのに。
時々不安になるんだ。
女々しいことを言うようだけど。

仕事と同じくらいには、俺は大切?
俺は、特別なんだって思ってもいい?
声に出さずに彼女に問いかける。
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