S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
「じゃ、そろそろ帰りますね。何か欲しいものあったら、連絡してください。」
帰ろうと忘れ物を確認している彼女を引き留める。
欲しいものなら、一つだけある。
「まだ、帰るなよ。」
引き寄せて、ソファに座らせれば、
「仕事の邪魔じゃないですか?」
「全然。むしろ、いずみが居てくれた方が捗る。」
「…手伝いましょうか?」
「そういう意味じゃなくて。」
「じゃあ、コーヒーだけ淹れてから帰ります。」
「ううん、いい。カフェインよりこっちを摂取したい。」
完全に仕事の手を休めて、彼女をソファに押し倒し、口付ける。
いずみはすぐに俺の欲求が分かったのか、最初に少し抵抗しただけで、大人しくキスに応えている。
「…疲れてないの?」
キスの合間に彼女が尋ねるのを、俺は笑って突っぱねる。
「男は疲れてるときほど、したくなるんだって。知らなかった?」
「本当に?」
「ホント。正直なところ、洗濯物よりピンチだって。」
「やだ、もう。」
くすくす笑いながら、ソファに二人深く沈み込んで抱き合った。
キスを繰り返しながら、改めて気づかされる。
本当に溜め込んでいたものは、洗濯物ではなくて。
俺には野菜の栄養素より、もっと必要なものがあったことを。
二時間後。
疲れ果ててソファで眠ってしまった彼女の横から、そっと抜け出して。
クリスマスは無理そうだけど、年末は彼女とゆっくり過ごせるように。
眠る彼女の頭をそっと撫でてから、俺は仕事を再開させた。
〈何より必要なのは end〉