S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~

「じゃ、そろそろ帰りますね。何か欲しいものあったら、連絡してください。」

帰ろうと忘れ物を確認している彼女を引き留める。

欲しいものなら、一つだけある。

「まだ、帰るなよ。」

引き寄せて、ソファに座らせれば、

「仕事の邪魔じゃないですか?」
「全然。むしろ、いずみが居てくれた方が捗る。」
「…手伝いましょうか?」
「そういう意味じゃなくて。」
「じゃあ、コーヒーだけ淹れてから帰ります。」
「ううん、いい。カフェインよりこっちを摂取したい。」

完全に仕事の手を休めて、彼女をソファに押し倒し、口付ける。
いずみはすぐに俺の欲求が分かったのか、最初に少し抵抗しただけで、大人しくキスに応えている。

「…疲れてないの?」

キスの合間に彼女が尋ねるのを、俺は笑って突っぱねる。

「男は疲れてるときほど、したくなるんだって。知らなかった?」
「本当に?」
「ホント。正直なところ、洗濯物よりピンチだって。」
「やだ、もう。」

くすくす笑いながら、ソファに二人深く沈み込んで抱き合った。
キスを繰り返しながら、改めて気づかされる。

本当に溜め込んでいたものは、洗濯物ではなくて。
俺には野菜の栄養素より、もっと必要なものがあったことを。



二時間後。
疲れ果ててソファで眠ってしまった彼女の横から、そっと抜け出して。

クリスマスは無理そうだけど、年末は彼女とゆっくり過ごせるように。

眠る彼女の頭をそっと撫でてから、俺は仕事を再開させた。


〈何より必要なのは end〉
< 43 / 56 >

この作品をシェア

pagetop