S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
自分の主張のみを投げ捨てて、田村は休憩スペースを出てくる。
俺は偶然そこを通りかかったかのように装い、奴と廊下ですれ違った。
「佐藤さん、お疲れさまでーす。」
「おう、お疲れ。」
何食わぬ顔で挨拶を交わしたが、心の中は田村への敵意で一杯だった。
嫉妬やら独占欲と一緒に、心の中を漂うのは、どうしようもない焦り。
よりによって、田村かよ。
日頃から部下として田村の優秀さを知っている俺としては、出来れば恋敵などにはなりたくない。
もちろん、いずみのことは信じているが、断りきれないうちに、いつのまにか罠にはめられてしまう事もある。
そう考えながら足を進めれば、遅れて休憩スペースから出てきたいずみとすれ違った。
「お疲れさまです。」
「おう、お疲れ。」
「午前中の件、今から報告してもいいですか?」
「ああ、頼む。」
田村と同じように、俺といつも通りの会話を交わす彼女を、ついじっと見つめてしまった。
「どうしました?」
「…いや、何かあったか?」
「何かって?」
「俺に何か相談したいこととか。あ、仕事以外で。」
「…特にありませんけど?急にどうしたんですか?まだ仕事中ですよ。」
いずみのことだから、俺に変な気を回させないように田村のことは言わないつもりなのだろう。
同じ職場だからこそ、色々と余計な気を遣うのだ。
「そうか、ならいい。困ったことがあれば言えよ。」
「どうしたの?急に変なの。」
彼女はにっこりと笑って、少しだけ甘い表情を見せる。
会社で、誰も周りにいない時にだけ、俺に見せるその顔が、たまらなく愛おしく見える。
田村については、何らかの形で対策を取らないと…
彼女の笑顔を目に焼き付けながら、こっそりと心の中で考えを巡らせた。
俺は偶然そこを通りかかったかのように装い、奴と廊下ですれ違った。
「佐藤さん、お疲れさまでーす。」
「おう、お疲れ。」
何食わぬ顔で挨拶を交わしたが、心の中は田村への敵意で一杯だった。
嫉妬やら独占欲と一緒に、心の中を漂うのは、どうしようもない焦り。
よりによって、田村かよ。
日頃から部下として田村の優秀さを知っている俺としては、出来れば恋敵などにはなりたくない。
もちろん、いずみのことは信じているが、断りきれないうちに、いつのまにか罠にはめられてしまう事もある。
そう考えながら足を進めれば、遅れて休憩スペースから出てきたいずみとすれ違った。
「お疲れさまです。」
「おう、お疲れ。」
「午前中の件、今から報告してもいいですか?」
「ああ、頼む。」
田村と同じように、俺といつも通りの会話を交わす彼女を、ついじっと見つめてしまった。
「どうしました?」
「…いや、何かあったか?」
「何かって?」
「俺に何か相談したいこととか。あ、仕事以外で。」
「…特にありませんけど?急にどうしたんですか?まだ仕事中ですよ。」
いずみのことだから、俺に変な気を回させないように田村のことは言わないつもりなのだろう。
同じ職場だからこそ、色々と余計な気を遣うのだ。
「そうか、ならいい。困ったことがあれば言えよ。」
「どうしたの?急に変なの。」
彼女はにっこりと笑って、少しだけ甘い表情を見せる。
会社で、誰も周りにいない時にだけ、俺に見せるその顔が、たまらなく愛おしく見える。
田村については、何らかの形で対策を取らないと…
彼女の笑顔を目に焼き付けながら、こっそりと心の中で考えを巡らせた。