S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~

「パパァ、みてみて~!!ドレス、きれいでしょー?」

二歳になる娘・なぎさは、すっかりお気に入りのブルーのミニドレスの裾を持って、無邪気に夫に駆け寄った。
その姿に夫は満更でもないらしく、仕事中には決して見せないようなデレデレとした顔で、娘を腕の中に迎え入れた。

「お待たせ、英介さん。」
「いやいや、レディの支度にしては、早い方じゃないか?」
「なぎさがノリノリで着替えてくれたから助かったわ。」
「そうだな、これなら予定より早めに式場に着くな。」

娘と私、女二人が美容院でめかし込んでいる間、夫には近くのカフェで待っていてもらった。
英介さんは、なぎさを抱っこしたまま、地下鉄の駅へと歩き出した。

「今日は、何のパーチーなの?」

なぎさが、わくわくしながら尋ねる。

「今日はね、パパとママのかいしゃのひとが結婚式をするんだよ。」
「けっこん!?じゃあ、おひめさまもくる?」
「結婚式にはお姫様じゃなくて、“およめさん”がいるんだ。でも、お姫様みたいに綺麗だぞ。」
「ちゅてき!およめしゃん!」

夫と娘のほのぼのとした会話に耳を傾けながら、私は二人の背中を追う。
おろしたてのピンヒールは、少々歩きづらい。自然と、二人との差が開いていく。

結婚後も仕事は続けているので、今でも毎日のようにオフィスでは、ヒールの高い靴を履いている。
しかし、結婚式のためのパーティー仕様の靴は、普段のハイヒールより歩くのに気を遣う。
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