S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
彼の車の助手席に座ると、目の前にかわいいクマのぬいぐるみが置いてあった。
こんなところにも、ギャップが!
と思いつつ、私は過去の経験から瞬時に察した。
おそらく、彼の趣味ではなく、きっと彼女が置いたのだろう。
「助手席乗っちゃって良かったですか?彼女に怒られません?」
私が気を遣って言うと、彼も私の視線の先にあるクマに気が付いた。
「ああ、それ。元カノのだ。先月別れた。」
私の心配をよそに、素っ気なく言われた。それはそれで問題だ。
「そうですか。今日は何だかいろいろすみません。」
一見すると分からないけど、意外と傷心だったかもしれないので、一応謝っておく。
「ああ、別にいい。もう、完全に吹っ切れてるから。クマ、欲しいなら持って帰っていいぞ。どうせ捨てるから。」
そう言って、彼はまた少し笑った。
こんな少女趣味のクマは要らないと言い出せず、空気を読んで仕方なくお礼を言って鞄へと仕舞う。