S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
吹っ切れているのなら、まあいいかと思い、特に他に会話もないので、その話題を続けてみる。

「どうして、別れたんですか?」

彼はハンドルを握ったまま、少し考える素振りをする。

「すぐに泣くんだよ。俺がちょっとキツいこと言うと。」

ぼそりと漏らした答えに、先ほどの彼の鬼の形相を思い出す。

「…それは、佐藤さんが怖すぎるからではなくて?」

思わず言ってしまった。

「いや、ほんと軽く注意しただけでも、ダメで。レベルにしたら、さっき松岡に怒ったのの100分の1くらいでも。」

いや、100分の1でも十分に怖いですよ、とは思ったが言えなかった。

「泣かれたら、それ以上何にも言えねえし。で、彼女はまた同じことを繰り返す。そして、俺がイライラする、の繰り返しで。最後は、二人とも性格が合わなかったと納得して、きれいさっぱり別れた。」

悲しい表情一つ見せずに話す彼からは、確かに未練だとか後悔は感じられなかった。
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