【短編】かき氷
かき氷
 蒸し返るような暑さで目が覚めた。



 いつの間にか、けちらしていた薄いかけ布団をたぐり寄せ、ゆっくりと体を起こす。



 それから低めの温度でシャワーを浴びて、歯を磨きながら部屋のカーテンを開けた。



 カーテンを開けると、いつもより更に強い日差しが部屋の温度を更に上昇させた気がした。



「今日は雲一つない晴天なり」



 私はあくびをしながら力なくそう呟いた。





 顔に薄く化粧を施し、セミロングの髪を一つに束ねキャップをかぶった私は、いつものように軽トラックのエンジンをかけた。



 軽トラックと言ってもただの軽トラックではない。



 後ろに氷を削る機械と冷凍庫が設置されてある軽トラックだ。



 この仕事を始めて、ちょうど八年になる。



 商売道具である軽トラックを走らせながら、私は十年前のことを思い返していた。



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