【短編】かき氷
 時計の針が六時を回る頃には、冷凍庫にあるブロック状の氷が残り一つになっていた。



 やっぱり忙しかった。



 ベンチに座り、うちわで顔に微風を浴びせながら思った。



 さてと、店じまいにして帰ろうかな。



 軽トラックに戻った私は、水浸しになった荷台部分を拭いたりして、片付けを始めた。



「かき氷くださーい!」



 片付けが終わろうとした時に、声をかけられた私は面倒だったので、断ろうとした。



 振り返ると、そこには三百円を握りしめた小学生ぐらいの男の子が一人。



「――はいよ。何味がいい?」



 あーあ、何か断りにくいなぁと思った私は、渋々、最後のブロック状の氷を機械に挟みながら、注文を聞いた。



「いちご!!」



「はいよ」



 ガリガリと音をたてながら、削った氷をカップに入れていく。



「いちご好きなの?」



 私は聞いてみた。



「うん!お母さんとお父さんが好きな色だから」



 男の子は満面の笑みで答えた。



「そっか。はい、できたよ」



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