さくら駆ける夏
翌朝
翌朝―――。
美也子さん、美優さん、涼君と一緒に朝食をとったあと、涼君が私に言った。
「今からちょっと時間ある?」
「特に何の予定もないよ。手がかりがほぼない状態だし、どこから手を付けたらいいのかすらまだ分からなくて……」
「昨日また思いついたことがあるんだ。俺の部屋に来てよ」
私は言われるがまま涼君についていった。
「昨日、ブログは作ったけど」
部屋に入るや否や、涼君は言う。
「細々とやってるだけじゃ、ご両親がブログを発見してくれるかわかんないし、別のこともやってみたほうがいいと思うんだ」
そのことは私も昨日の晩、少し考えていた。
「でも、何をしようかな。何かいい案があるの?」
「動画投稿サイトを利用したらどうかなってね」
「でも、顔を知られるのって、なんか、嫌だなぁ」
「それならお面でもかぶってね。ご両親とは一歳ぐらいで別れちゃったってことだし、今の顔は当然知らないはずだから、それでいいんじゃないかな」
「それなら……」
私は涼君に言われるままに動画を撮り、複数の動画投稿サイトにアップした。
もちろん、大事な手がかりである、押し花キーホルダーとポケットアルバムも動画内で見せながら。
「あれ? これ……」
ふいに涼君が、私の例のキーホルダーを手に取った。
不思議そうな顔をしている。
「どうしたの?」
「いや……気のせいかもしれないけど……。このキーホルダー、どこかで見たことあるなって」
「ええっ?!」
どういうことだろう……。
さっき動画を撮るまでに、私が、このキーホルダーを見せたことのある人は限られている。
お父さんお母さんおじいちゃんの三人を除くと、涼君が初めてのはずだ。
おじいちゃんのあの衝撃発言を聞くまでは、これを持ち出すこともなく大切に保管してたし。
「ほんとに、これと全く同じキーホルダーを見たことがあるの?」
「いや、分からない……」
涼君は一生懸命に思い出そうとしている様子だ。
「でも、どこかで見たことがあるような気がするのは確かだ。それがどこかは分からないし、このキーホルダーと全く同じものなのかも分からない……。昨日はあんまりじっくりと見てなかったから何も思わなかったんだけど、こうして見てみると……。うーん、たしかに見覚えがあるような……」
「でも……私がこれを見せたのは、さっきの動画を除くと涼君で四人目だし……少なくとも、私のではないよね。よく似たキーホルダーを見たのかも」
「そうなんだよね。さくらちゃんのキーホルダーを見たことがあるはずがないし……。ん~、気のせいかもね。変なことを言ってごめん」
涼君は、キーホルダーを私の手に返して言った。
私の心の中は、クエスチョンマークでいっぱいだ。
その後すぐ、涼君は部活のため、学校へ行った。
私も、午後からの練習試合は観戦にいくつもりだ。
それまでは何もすることはなさそうだし、親友の沙織に電話することにした。
ここに出発する前にも電話したんだけど、お互い時間がなかったせいで、あまり詳しい話はしてないんだよね。
さっきの涼君の、キーホルダーに対するリアクションはすごく気になるんだけど、私が考えてもどうしようもないから。
涼君本人も「気のせいかも」って言ってたし。
私は、すぐに沙織に電話をかけた。
「元気にしてる? いきなり大変なことになったね!」
「おかげさまで、まぁまぁ元気だよ。沙織も元気そうでよかった」
私は今回のことについて、詳しく沙織に話す。
「うんうん、分かる分かる。気になるもんね。手がかりとかはどう?」
「今のところほとんどないから、時間がかかりそう……」
「そっか……。早く解決するといいね」
沙織に聞いてもらっただけで、少し気が晴れたように思う。
色々手助けしてくれる涼君のおかげもあって、元々そんなに深刻な気分でいた訳でもないけど。
沙織も特に用事がないらしいので、そのあとは話を変えて、とりとめもないおしゃべりをした。
いつの間にかお昼近かったので、私は沙織に「そろそろお昼だね。またね」と言って電話を切り、お昼ご飯を食べに出た。
おしゃれなカフェが近くにあることを、昨日、涼君から聞いていたからだ。
美也子さん、美優さん、涼君と一緒に朝食をとったあと、涼君が私に言った。
「今からちょっと時間ある?」
「特に何の予定もないよ。手がかりがほぼない状態だし、どこから手を付けたらいいのかすらまだ分からなくて……」
「昨日また思いついたことがあるんだ。俺の部屋に来てよ」
私は言われるがまま涼君についていった。
「昨日、ブログは作ったけど」
部屋に入るや否や、涼君は言う。
「細々とやってるだけじゃ、ご両親がブログを発見してくれるかわかんないし、別のこともやってみたほうがいいと思うんだ」
そのことは私も昨日の晩、少し考えていた。
「でも、何をしようかな。何かいい案があるの?」
「動画投稿サイトを利用したらどうかなってね」
「でも、顔を知られるのって、なんか、嫌だなぁ」
「それならお面でもかぶってね。ご両親とは一歳ぐらいで別れちゃったってことだし、今の顔は当然知らないはずだから、それでいいんじゃないかな」
「それなら……」
私は涼君に言われるままに動画を撮り、複数の動画投稿サイトにアップした。
もちろん、大事な手がかりである、押し花キーホルダーとポケットアルバムも動画内で見せながら。
「あれ? これ……」
ふいに涼君が、私の例のキーホルダーを手に取った。
不思議そうな顔をしている。
「どうしたの?」
「いや……気のせいかもしれないけど……。このキーホルダー、どこかで見たことあるなって」
「ええっ?!」
どういうことだろう……。
さっき動画を撮るまでに、私が、このキーホルダーを見せたことのある人は限られている。
お父さんお母さんおじいちゃんの三人を除くと、涼君が初めてのはずだ。
おじいちゃんのあの衝撃発言を聞くまでは、これを持ち出すこともなく大切に保管してたし。
「ほんとに、これと全く同じキーホルダーを見たことがあるの?」
「いや、分からない……」
涼君は一生懸命に思い出そうとしている様子だ。
「でも、どこかで見たことがあるような気がするのは確かだ。それがどこかは分からないし、このキーホルダーと全く同じものなのかも分からない……。昨日はあんまりじっくりと見てなかったから何も思わなかったんだけど、こうして見てみると……。うーん、たしかに見覚えがあるような……」
「でも……私がこれを見せたのは、さっきの動画を除くと涼君で四人目だし……少なくとも、私のではないよね。よく似たキーホルダーを見たのかも」
「そうなんだよね。さくらちゃんのキーホルダーを見たことがあるはずがないし……。ん~、気のせいかもね。変なことを言ってごめん」
涼君は、キーホルダーを私の手に返して言った。
私の心の中は、クエスチョンマークでいっぱいだ。
その後すぐ、涼君は部活のため、学校へ行った。
私も、午後からの練習試合は観戦にいくつもりだ。
それまでは何もすることはなさそうだし、親友の沙織に電話することにした。
ここに出発する前にも電話したんだけど、お互い時間がなかったせいで、あまり詳しい話はしてないんだよね。
さっきの涼君の、キーホルダーに対するリアクションはすごく気になるんだけど、私が考えてもどうしようもないから。
涼君本人も「気のせいかも」って言ってたし。
私は、すぐに沙織に電話をかけた。
「元気にしてる? いきなり大変なことになったね!」
「おかげさまで、まぁまぁ元気だよ。沙織も元気そうでよかった」
私は今回のことについて、詳しく沙織に話す。
「うんうん、分かる分かる。気になるもんね。手がかりとかはどう?」
「今のところほとんどないから、時間がかかりそう……」
「そっか……。早く解決するといいね」
沙織に聞いてもらっただけで、少し気が晴れたように思う。
色々手助けしてくれる涼君のおかげもあって、元々そんなに深刻な気分でいた訳でもないけど。
沙織も特に用事がないらしいので、そのあとは話を変えて、とりとめもないおしゃべりをした。
いつの間にかお昼近かったので、私は沙織に「そろそろお昼だね。またね」と言って電話を切り、お昼ご飯を食べに出た。
おしゃれなカフェが近くにあることを、昨日、涼君から聞いていたからだ。