さくら駆ける夏
八重桜さん
家に帰って自分の部屋に荷物を置き、何気なくブログを開いた私はかなり驚いた。
開設したばかりなのに、すでに七件ものコメントを付けてもらっていたから。
内容は、「応援してるので頑張ってください」や「早くご両親が見つかるといいですね」といったものがほとんどだ。
でも、ただ一つだけ、気になるコメントがあった。
私は黙読する。
「初めまして。
私は都内に住む八重桜と申す者です。
三つの会社を経営、運営しています。
昨日、私の社員が偶然あなたの動画とブログを拝見し、私の事情を知ってくれているため、もしやと思って私に知らせてくれました。
単刀直入に申しますと、あなたは私の娘である可能性が高いです。
詳しいお話をしたいところなんですが、ここでは人目に触れますし、長い話にもなりますので、あなたさえよろしければ一度お会いしたいと考えております。
このコメント内のメールアドレス欄に、私のアドレスを記入しておきますので、お手数ですが一度ご連絡いただければ幸いです。
折り返し、お会いする日時などを決めさせていただきたいと考えております」
読み終わって、絶句する私。
まさかこんなに早く見つかるなんて。
でも……八重桜さんには申し訳ないんだけど……これって本当なのかな?
もしかすると、八重桜さんなんて人すら存在せず、単なる冷やかしかイタズラである可能性も捨てきれないし……。
とりあえず、私は涼君に相談してみることにした。
「たしかに、怪しいにおいはぷんぷんするね」
話を聞いて、開口一番に涼君が言う。
「だけど、もしかしたら本物の親御さんかもしれないし、滅多なことは言えないけどね。よーし! メールの文面は僕に任せてよ! もし会いに行くことになったら、俺もついていってもいいかな?」
「ついてきてくれるの?」
「もちろん。この八重桜って人を全く信用しないわけではないけど、もし詐欺とかイタズラならやっぱり危ないと思うから。俺のことは、ヒサさんの親戚とでもしておいてくれればいいよ。そうしておいてくれれば、無駄な説明に時間をかけずに済むし。そういうことで、どうかな?」
もちろん私は大賛成だ。
一人で行くより、ずっと心強いし、安心だから。
ほんと、涼君って頼りになるなぁ。
私と同い年なのに。
………。
私も、もっとしっかりしなくちゃ。
それから涼君と一緒にメールを送り、返事を待つことにした。
そして夕食までの間、おしゃべりを楽しむことに。
夕食を食べたあと、私はまた自分の部屋へ。
すぐにパソコンを開く私。
すると、早くも返信が来ていることに気づいた。
涼君に知らせないと!
涼君に手伝ってもらいつつ、メールでのやり取りにて、会う日取りを決めることに。
八重桜さんは、「早速だけど、明日の午後一時でどうか」と提案してくれた。
私たちは、「善は急げ」ということでその申し出を受けることに決め、返事を送る。
涼君は、ちょうど明日は部活の練習がなくて、何も予定のない日らしいから、好都合みたいだ。
もちろん、かねてからの打ち合わせ通り、「おじいちゃんの親戚で、私の付き添い」として、涼君のことも、八重桜さんにあらかじめ伝えておいた。
八重桜さんは、往復の交通費など、かかる経費を全て支払ってくれるという。
申し訳ないとは思ったけど、お言葉に甘えることにした。
新幹線代などは、高校生の私たちにとっては手痛い出費だから……。
そして、「明日の午後十二時半に東京駅の指定された出口にて待ち合わせ」「そこに八重桜さんの会社の社員さんが迎えに来てくれるので、その車で八重桜さんの会社まで送ってもらう」ということで、話がまとまった。
スムーズに事が進んで、嬉しくなる。
私たちはすぐに、美優さんたちに、このことを伝えにいった。
「こんなに早く見つかるなんて。いや~、ほんとによかった」
光定さんがしみじみと言う。
美也子さんは、少し目を潤ませている。
美優さんはにこにこしていて、とても嬉しそうだ。
まだ決まったわけじゃない、って言いたいところだったけど……それは裏を返せば、八重桜さんを信用していないということになるかも。
なので、「ええ、まぁ」と言葉を濁しておいた。
すると、すかさず、フォローを入れてくれる涼君。
「いやいや、まだ決まったわけじゃないでしょ。先方の勘違いという可能性もなきにしもあらずだよ」
「でも、申し出てこられたという話だし、先方では何か確固たる根拠でもあるんだろう。俺はもう決まりだと思うね」
自信ありげに光定さんは言った。
その言葉にうなずく美也子さんと美優さん。
「とりあえず、明日、確かめてきますね。涼君も付き添いで来てくれるみたいなんで、心強いです」
「気をつけていってきてね、二人とも。お土産も忘れずにね」
美優さんが笑顔で言う。
ちゃっかりしてるなぁ……。
そして、涼君と私は、それぞれの部屋に引き上げた。
明日に備えて、早めに就寝することにする。
私は八重桜さんの娘なのだろうか……?
会社を三つも経営ってことは……八重桜さんって、社長さんとか会長さんとか、そんな感じのえらい人?
もし八重桜さんが私の実のお父さんなら、お母さんはどうしているんだろう?
色んなことが頭に浮かんで、その晩はなかなか寝付けなかった。
開設したばかりなのに、すでに七件ものコメントを付けてもらっていたから。
内容は、「応援してるので頑張ってください」や「早くご両親が見つかるといいですね」といったものがほとんどだ。
でも、ただ一つだけ、気になるコメントがあった。
私は黙読する。
「初めまして。
私は都内に住む八重桜と申す者です。
三つの会社を経営、運営しています。
昨日、私の社員が偶然あなたの動画とブログを拝見し、私の事情を知ってくれているため、もしやと思って私に知らせてくれました。
単刀直入に申しますと、あなたは私の娘である可能性が高いです。
詳しいお話をしたいところなんですが、ここでは人目に触れますし、長い話にもなりますので、あなたさえよろしければ一度お会いしたいと考えております。
このコメント内のメールアドレス欄に、私のアドレスを記入しておきますので、お手数ですが一度ご連絡いただければ幸いです。
折り返し、お会いする日時などを決めさせていただきたいと考えております」
読み終わって、絶句する私。
まさかこんなに早く見つかるなんて。
でも……八重桜さんには申し訳ないんだけど……これって本当なのかな?
もしかすると、八重桜さんなんて人すら存在せず、単なる冷やかしかイタズラである可能性も捨てきれないし……。
とりあえず、私は涼君に相談してみることにした。
「たしかに、怪しいにおいはぷんぷんするね」
話を聞いて、開口一番に涼君が言う。
「だけど、もしかしたら本物の親御さんかもしれないし、滅多なことは言えないけどね。よーし! メールの文面は僕に任せてよ! もし会いに行くことになったら、俺もついていってもいいかな?」
「ついてきてくれるの?」
「もちろん。この八重桜って人を全く信用しないわけではないけど、もし詐欺とかイタズラならやっぱり危ないと思うから。俺のことは、ヒサさんの親戚とでもしておいてくれればいいよ。そうしておいてくれれば、無駄な説明に時間をかけずに済むし。そういうことで、どうかな?」
もちろん私は大賛成だ。
一人で行くより、ずっと心強いし、安心だから。
ほんと、涼君って頼りになるなぁ。
私と同い年なのに。
………。
私も、もっとしっかりしなくちゃ。
それから涼君と一緒にメールを送り、返事を待つことにした。
そして夕食までの間、おしゃべりを楽しむことに。
夕食を食べたあと、私はまた自分の部屋へ。
すぐにパソコンを開く私。
すると、早くも返信が来ていることに気づいた。
涼君に知らせないと!
涼君に手伝ってもらいつつ、メールでのやり取りにて、会う日取りを決めることに。
八重桜さんは、「早速だけど、明日の午後一時でどうか」と提案してくれた。
私たちは、「善は急げ」ということでその申し出を受けることに決め、返事を送る。
涼君は、ちょうど明日は部活の練習がなくて、何も予定のない日らしいから、好都合みたいだ。
もちろん、かねてからの打ち合わせ通り、「おじいちゃんの親戚で、私の付き添い」として、涼君のことも、八重桜さんにあらかじめ伝えておいた。
八重桜さんは、往復の交通費など、かかる経費を全て支払ってくれるという。
申し訳ないとは思ったけど、お言葉に甘えることにした。
新幹線代などは、高校生の私たちにとっては手痛い出費だから……。
そして、「明日の午後十二時半に東京駅の指定された出口にて待ち合わせ」「そこに八重桜さんの会社の社員さんが迎えに来てくれるので、その車で八重桜さんの会社まで送ってもらう」ということで、話がまとまった。
スムーズに事が進んで、嬉しくなる。
私たちはすぐに、美優さんたちに、このことを伝えにいった。
「こんなに早く見つかるなんて。いや~、ほんとによかった」
光定さんがしみじみと言う。
美也子さんは、少し目を潤ませている。
美優さんはにこにこしていて、とても嬉しそうだ。
まだ決まったわけじゃない、って言いたいところだったけど……それは裏を返せば、八重桜さんを信用していないということになるかも。
なので、「ええ、まぁ」と言葉を濁しておいた。
すると、すかさず、フォローを入れてくれる涼君。
「いやいや、まだ決まったわけじゃないでしょ。先方の勘違いという可能性もなきにしもあらずだよ」
「でも、申し出てこられたという話だし、先方では何か確固たる根拠でもあるんだろう。俺はもう決まりだと思うね」
自信ありげに光定さんは言った。
その言葉にうなずく美也子さんと美優さん。
「とりあえず、明日、確かめてきますね。涼君も付き添いで来てくれるみたいなんで、心強いです」
「気をつけていってきてね、二人とも。お土産も忘れずにね」
美優さんが笑顔で言う。
ちゃっかりしてるなぁ……。
そして、涼君と私は、それぞれの部屋に引き上げた。
明日に備えて、早めに就寝することにする。
私は八重桜さんの娘なのだろうか……?
会社を三つも経営ってことは……八重桜さんって、社長さんとか会長さんとか、そんな感じのえらい人?
もし八重桜さんが私の実のお父さんなら、お母さんはどうしているんだろう?
色んなことが頭に浮かんで、その晩はなかなか寝付けなかった。