さくら駆ける夏
帰宅して
清涼院家に帰り着くと、光定さんと美也子さんに玄関先でばったり会って、浴衣を褒めてもらえた。
その後、涼君と私は、二人と連れ立ってリビングへ向かう。
美優さんに草履のお礼を言うと、「気にしないで。役に立ててよかった」と言ってくれた。
涼君がおみやげのたこ焼きのパックを取り出した途端、美優さんの目がキラキラ輝く。
涼君からは「父さんの分も残しておいてね」と、美也子さんからは「もうすぐご飯だから、たこ焼きはその後にしようね」と、釘を刺されていたけど。
「それじゃ、そろそろご飯にしよっか」
美優さんがそう言って立ち上がる。
「あ、それじゃ、着替えてきますね」
私も立ち上がると、すぐに部屋へと向かった。
着替えてリビングに戻ったあと、晩御飯を美味しくいただいた。
縁日の話題で盛り上がりながら。
みんなで食べると美味しいなぁ。
その後、片付けなどが全て終わると、涼君が私に言った。
「俺の部屋でまた話そう」
「うん」
誘ってもらうだけで、うきうきしてる私。
私たちは二人で、涼君の部屋に向かった。
「あ、お茶忘れた。持って来るね」
部屋に入ると、すぐまたリビングに引き返していく涼君。
私は、涼君の部屋に一人残された。
落ち着かないので、そわそわきょろきょろしていると、涼君の机の上に飾られている写真に視線が止まる。
以前、この部屋に入らせてもらったときには気づかなかったものだ。
おしゃれな写真立てに入れられている。
何よりも私の注意を引いたのは、写真の内容だ。
そこには、涼君と………私の知らない女の子が、二人で写っていた……。
恐る恐る立ち上がった私は、写真の近くに歩み寄り、そっと覗き込んだ。
写真の中の女の子は、涼君や私と同じくらいの年に見える。
涼君の手は、親しげに女の子の肩に触れていた。
涼君もその子も、身体を寄せ合って、幸せそうな笑顔を見せている。
まだ私は出会ってから日が浅いとはいえ、涼君のこんな笑顔を見たことがないように思う。
正直、ショックだった……。
彼女さん、なのかな?
そういう話は聞いていないけど、私のほうから聞いたこともないし、そもそも涼君が私に話す義務なんかあるわけがない。
だから、彼女さんがいたとしても、別に涼君が隠していたわけではないはずだ。
つまり……私は涼君にとって、やはりただの友達であり、それはどうあがいても変えることの不可能な現実かもしれないということを、深く思い知らされた。
優しくしてもらえていたのも、別に特別なことじゃなく、きっと普段から涼君は誰に対しても優しいんだろう。
手をつないでもらったり、色々誘ってもらっただけで浮かれていた自分を思い返すと、惨めで悲しかった。
気を紛らわすために、カーテンの隙間から窓の外を眺める。
外はすでに真っ暗になっていた。
門の外を走る道には、車も人も通っていないようだ。
縁日から帰ってくるときには少なかった雲が、やや増えたように感じる。
夏のお天気は変わりやすい、とよく聞くから、もしかしたらこれから雨が降るのかも。
「おまたせ!」
涼君がペットボトルと二つのコップを手に、元気よく戻ってきた。
「あれ? どうしたの?」
しかし、私の様子を見て、すぐに心配そうな様子になる。
やばい……。
動揺と悲しみが、完全に顔に出てしまっていたかも。
「ううん、何でも」
「そっか、疲れもあるだろうし、大変だよね」
涼君の口調に、深いいたわりが感じられて、すぐに涙ぐみそうになる。
「俺でよければ、何でも話してね。愚痴でも不満でも不安でも、ぶつけてくれればいいから」
そう言うと、涼君は私の肩に手を置いてくれた。
すごく嬉しいはずなのに、胸が痛い。
肩に手を……。
自然と、あの写真の女の子を思い出してしまう私。
あの子の肩に置かれた涼君の手……。
我慢できずに、私は泣き出してしまった。
「気持ち、分かるよ」
涼君の優しい言葉が、逆に私にはつらい。
しばらくして、どうにか涙を止めることが出来た私は、目元をぬぐいながら言った。
「急に泣き出して、ごめんね」
「気にしないで」
やっと、少しは落ち着いてきたかな。
その後、涼君と私は、二人と連れ立ってリビングへ向かう。
美優さんに草履のお礼を言うと、「気にしないで。役に立ててよかった」と言ってくれた。
涼君がおみやげのたこ焼きのパックを取り出した途端、美優さんの目がキラキラ輝く。
涼君からは「父さんの分も残しておいてね」と、美也子さんからは「もうすぐご飯だから、たこ焼きはその後にしようね」と、釘を刺されていたけど。
「それじゃ、そろそろご飯にしよっか」
美優さんがそう言って立ち上がる。
「あ、それじゃ、着替えてきますね」
私も立ち上がると、すぐに部屋へと向かった。
着替えてリビングに戻ったあと、晩御飯を美味しくいただいた。
縁日の話題で盛り上がりながら。
みんなで食べると美味しいなぁ。
その後、片付けなどが全て終わると、涼君が私に言った。
「俺の部屋でまた話そう」
「うん」
誘ってもらうだけで、うきうきしてる私。
私たちは二人で、涼君の部屋に向かった。
「あ、お茶忘れた。持って来るね」
部屋に入ると、すぐまたリビングに引き返していく涼君。
私は、涼君の部屋に一人残された。
落ち着かないので、そわそわきょろきょろしていると、涼君の机の上に飾られている写真に視線が止まる。
以前、この部屋に入らせてもらったときには気づかなかったものだ。
おしゃれな写真立てに入れられている。
何よりも私の注意を引いたのは、写真の内容だ。
そこには、涼君と………私の知らない女の子が、二人で写っていた……。
恐る恐る立ち上がった私は、写真の近くに歩み寄り、そっと覗き込んだ。
写真の中の女の子は、涼君や私と同じくらいの年に見える。
涼君の手は、親しげに女の子の肩に触れていた。
涼君もその子も、身体を寄せ合って、幸せそうな笑顔を見せている。
まだ私は出会ってから日が浅いとはいえ、涼君のこんな笑顔を見たことがないように思う。
正直、ショックだった……。
彼女さん、なのかな?
そういう話は聞いていないけど、私のほうから聞いたこともないし、そもそも涼君が私に話す義務なんかあるわけがない。
だから、彼女さんがいたとしても、別に涼君が隠していたわけではないはずだ。
つまり……私は涼君にとって、やはりただの友達であり、それはどうあがいても変えることの不可能な現実かもしれないということを、深く思い知らされた。
優しくしてもらえていたのも、別に特別なことじゃなく、きっと普段から涼君は誰に対しても優しいんだろう。
手をつないでもらったり、色々誘ってもらっただけで浮かれていた自分を思い返すと、惨めで悲しかった。
気を紛らわすために、カーテンの隙間から窓の外を眺める。
外はすでに真っ暗になっていた。
門の外を走る道には、車も人も通っていないようだ。
縁日から帰ってくるときには少なかった雲が、やや増えたように感じる。
夏のお天気は変わりやすい、とよく聞くから、もしかしたらこれから雨が降るのかも。
「おまたせ!」
涼君がペットボトルと二つのコップを手に、元気よく戻ってきた。
「あれ? どうしたの?」
しかし、私の様子を見て、すぐに心配そうな様子になる。
やばい……。
動揺と悲しみが、完全に顔に出てしまっていたかも。
「ううん、何でも」
「そっか、疲れもあるだろうし、大変だよね」
涼君の口調に、深いいたわりが感じられて、すぐに涙ぐみそうになる。
「俺でよければ、何でも話してね。愚痴でも不満でも不安でも、ぶつけてくれればいいから」
そう言うと、涼君は私の肩に手を置いてくれた。
すごく嬉しいはずなのに、胸が痛い。
肩に手を……。
自然と、あの写真の女の子を思い出してしまう私。
あの子の肩に置かれた涼君の手……。
我慢できずに、私は泣き出してしまった。
「気持ち、分かるよ」
涼君の優しい言葉が、逆に私にはつらい。
しばらくして、どうにか涙を止めることが出来た私は、目元をぬぐいながら言った。
「急に泣き出して、ごめんね」
「気にしないで」
やっと、少しは落ち着いてきたかな。