さくら駆ける夏
海
「見えてきたね!」
窓の外を見ながら、涼君がテンション高めの様子で言った。
私たちは電車の中だ。
すでに下に水着もちゃんと着てきたし、お昼ご飯もコンビニで調達済みだし、準備は万端。
駅に到着して電車を降りた私たちは、十五分ほど歩いて浜辺に到着した。
先週行ったプールほど混みあっていなかったが、そこそこ人の姿は多い。
お昼ご飯を食べた後、ちょっと休憩してから、私たちは海に出て遊ぶことにした。
手早く水着姿になる私たち。
涼君はプールのときと同じ水着だった。
相変わらず、かっこいい!
私のほうは今回、空色のビキニを選んだ。
セットでついてたパレオも身体に巻く。
「そのビキニも、すごくよく似合っているよ。パレオもおしゃれだね」
視線がすごく、くすぐったい。
「あ、ありがとう」
お礼を言う声の震えを抑えきれない私。
昨日の出来事がずっと心の中で引っかかっているはずなのに、こうして涼君と二人っきりになると、そんなことも忘れてしまう。
能天気なのかなぁ、私って。
おじいちゃんほどではないはずだけどね。
それから、準備運動をしたあと、私たちは波打ち際へと向かった。
さりげなく、私の手を引いてくれる涼君。
涼君って、たまにこうして大胆になる気がする。
でも、そんなところも大好き。
そして、「これってすごく恋人っぽい」と思うと……嬉しさと恥ずかしさの入り混じった気持ちになる。
波打ち際まで着いた私たちは、ばしゃばしゃと水に入っていく。
海水が冷たくて気持ちいい。
「海に来るのも、一年ぶりかぁ。さくらちゃんは、毎年、海に来るの?」
涼君がしみじみと言う。
「私は二年ぶりかなぁ。涼君と同じく、今年はこれが初めてだよ」
泳ぎが下手だから、あまり頻繁には来ないんだよね。
前回も、沙織たちが誘ってくれたのを断りきれずに参加しただけだし。
しばらく仲良く遊んだ後、休憩のために、いったん私たちは浜辺に上がった。
「さっき一年ぶりって言ってたよね。涼君は毎年、海に来てるの?」
休憩中、聞いてみた。
「うん、だいたい一年に二回以上は、確実に来てるかな。ここじゃなくて、和歌山県の白浜に行くこともよくあるよ。あっちにも友達がいるんだ」
「白浜かぁ、行ったことないなぁ」
語感から、美しいビーチを想像しながら私が言った。
「いつも友達と一緒に行くの?」
「うん、たいていそうだけど、家族で行ったことも何度かあるよ。ああ、思い出した。白浜旅行のうち一回は、ヒサさんや、じいちゃんの友達たちも一緒だったっけ」
「ええ?!」
初耳だった。
おじいちゃんは夏休みや冬休みなどの長期休暇になると、友達と一緒に泊りがけの旅行に出かけることも珍しくなかったから、旅行のこと自体はそんなに不思議ではないんだけど。
おじいちゃんのその「友達」には、涼君たちも含まれてるわけね。
当然かもしれないけど。
「ねぇねぇ、白浜旅行のときのおじいちゃん、どんな様子だった? いつも通り、元気いっぱい、大はしゃぎ?」
そのときのことを詳しく聞いてみた。
私のいない時のおじいちゃんの様子を知りたくて。
「いつもテンション高いよね、ヒサさんは。あの旅行のときは、十人ぐらいの旅行だったんだけど、ヒサさんと母さんがムードメイカーだったかな。翠も割としゃべるほうだけど、あの二人にはかなわないから」
「ははは。なんだか、想像できるなぁ」
おじいちゃんと美優さんのハイテンションなマシンガントークを想像すると、思わず笑みがこぼれた。
しかし、そのとき―――。
「…………あ!」
怪訝な表情になった涼君が、急に、驚いたような声をあげた。
口をあんぐり開けている。
窓の外を見ながら、涼君がテンション高めの様子で言った。
私たちは電車の中だ。
すでに下に水着もちゃんと着てきたし、お昼ご飯もコンビニで調達済みだし、準備は万端。
駅に到着して電車を降りた私たちは、十五分ほど歩いて浜辺に到着した。
先週行ったプールほど混みあっていなかったが、そこそこ人の姿は多い。
お昼ご飯を食べた後、ちょっと休憩してから、私たちは海に出て遊ぶことにした。
手早く水着姿になる私たち。
涼君はプールのときと同じ水着だった。
相変わらず、かっこいい!
私のほうは今回、空色のビキニを選んだ。
セットでついてたパレオも身体に巻く。
「そのビキニも、すごくよく似合っているよ。パレオもおしゃれだね」
視線がすごく、くすぐったい。
「あ、ありがとう」
お礼を言う声の震えを抑えきれない私。
昨日の出来事がずっと心の中で引っかかっているはずなのに、こうして涼君と二人っきりになると、そんなことも忘れてしまう。
能天気なのかなぁ、私って。
おじいちゃんほどではないはずだけどね。
それから、準備運動をしたあと、私たちは波打ち際へと向かった。
さりげなく、私の手を引いてくれる涼君。
涼君って、たまにこうして大胆になる気がする。
でも、そんなところも大好き。
そして、「これってすごく恋人っぽい」と思うと……嬉しさと恥ずかしさの入り混じった気持ちになる。
波打ち際まで着いた私たちは、ばしゃばしゃと水に入っていく。
海水が冷たくて気持ちいい。
「海に来るのも、一年ぶりかぁ。さくらちゃんは、毎年、海に来るの?」
涼君がしみじみと言う。
「私は二年ぶりかなぁ。涼君と同じく、今年はこれが初めてだよ」
泳ぎが下手だから、あまり頻繁には来ないんだよね。
前回も、沙織たちが誘ってくれたのを断りきれずに参加しただけだし。
しばらく仲良く遊んだ後、休憩のために、いったん私たちは浜辺に上がった。
「さっき一年ぶりって言ってたよね。涼君は毎年、海に来てるの?」
休憩中、聞いてみた。
「うん、だいたい一年に二回以上は、確実に来てるかな。ここじゃなくて、和歌山県の白浜に行くこともよくあるよ。あっちにも友達がいるんだ」
「白浜かぁ、行ったことないなぁ」
語感から、美しいビーチを想像しながら私が言った。
「いつも友達と一緒に行くの?」
「うん、たいていそうだけど、家族で行ったことも何度かあるよ。ああ、思い出した。白浜旅行のうち一回は、ヒサさんや、じいちゃんの友達たちも一緒だったっけ」
「ええ?!」
初耳だった。
おじいちゃんは夏休みや冬休みなどの長期休暇になると、友達と一緒に泊りがけの旅行に出かけることも珍しくなかったから、旅行のこと自体はそんなに不思議ではないんだけど。
おじいちゃんのその「友達」には、涼君たちも含まれてるわけね。
当然かもしれないけど。
「ねぇねぇ、白浜旅行のときのおじいちゃん、どんな様子だった? いつも通り、元気いっぱい、大はしゃぎ?」
そのときのことを詳しく聞いてみた。
私のいない時のおじいちゃんの様子を知りたくて。
「いつもテンション高いよね、ヒサさんは。あの旅行のときは、十人ぐらいの旅行だったんだけど、ヒサさんと母さんがムードメイカーだったかな。翠も割としゃべるほうだけど、あの二人にはかなわないから」
「ははは。なんだか、想像できるなぁ」
おじいちゃんと美優さんのハイテンションなマシンガントークを想像すると、思わず笑みがこぼれた。
しかし、そのとき―――。
「…………あ!」
怪訝な表情になった涼君が、急に、驚いたような声をあげた。
口をあんぐり開けている。