伝えたい音
すると教会の牧師さんが近づいてきた


「君は清野さんの息子かな?」



「は、はい」

僕は驚きながらも答えた



「美波さん、あなたが長年探していた方はこの方のようですな」



「え…」


僕は更に驚いた



「待ってください。僕はこの島にきたことはないです。だから人違いです」




「人違いなんかじゃないのです。あなたはこの島に5歳まで住んでいたのですよ」


そんなはずはない


だって記憶にも写真にもない


僕は東京生まれの東京育ち


18年間そう思って生きてきたんだ





「あなたはここに住んでいたときの記憶が抜けているみたいですね」




「はい。全く覚えにありません」




「それではみせてあげましょう」






そう言って牧師さんはどこかへと消えていった





僕達の間には気まずい空気が漂った
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