伝えたい音
「僕がこの島に5歳まで暮らしていたとしても美波の初恋の相手が僕だとは限らないだろ?」



美波は首を振った



「じゃあどうして今アメージング・グレイスを弾いたの?」


どうしてって…


僕はどうして弾いたのだろうか



「アメージング・グレイスはあなたが5歳のときにコンクールで優勝した曲よ」



確かに一度だけ




アメージング・グレイスをコンクールで弾いたことはあった


たった一度だけ…





それがこの島

波照間島だったなんて




「あなたの奏(かな)という名前はきっと沖縄の愛(かな)と音楽一家での奏(かな)2つの意味がこめられているんだろう」


そう言ったのは牧師さんだった


2つの意味…



僕はなんだか混乱してきた



「てか奏(かな)くんは美波の初恋の相手だと嫌なの?」

陽菜の問いに焦った


「嫌ってわけではない」


「じゃあなに?」


「もしそれが本当は僕じゃなかった場合、美波は違うヤツを好きになるんだろ?」

陽菜は黙った


「それなら最初から僕と美波は始まらなければいい」


「それは違うと思う」


だいちゃんが否定した



ここで話は終わると思っていた
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