肉食系男子に、挟まれて~アザーストーリー~【完結】
「えっと、昨日の事」
「……あ、うん」
その事か。
「真央梨があいつの事好きなのかって思ったらさ、勝手に体が動いてた。
…合わせる顔ないわ、って思って。今日あんま話せなかった」
「……そうだったんだ」
「痛かった、よな。ごめん」
私は大丈夫の意味も込めて、ううんと首を振った。
だけど、春斗はニコリともしない。
「俺、諦めるから」
「え?」
春斗から告げられた言葉の意味が分からず、私は目を何度も瞬かせる。
春斗は再度、口を開きしっかりと言った。
「真央梨の事、諦めるから」
「……」
「だから、安心して」
「……」
「それだけ言いたかった。これからは普通に話すから」
「……わ、かった」
私はなんとか、それだけ言うと春斗を見る事が出来ずに視線を伏せた。
もう言いたい事がないのか、春斗は音楽室から出て行こうとする。
扉に手をかけた時、ぴたりと動きを止めてこちらを振り返った。
それから。
「今日、飲みに行くんだろ?帰り、気を付けろよ」
春斗はそう言って少しだけ微笑むと扉を開けて出て行く。
それを私は黙って見つめた。