肉食系男子に、挟まれて~アザーストーリー~【完結】


「えっと、昨日の事」

「……あ、うん」


その事か。


「真央梨があいつの事好きなのかって思ったらさ、勝手に体が動いてた。
…合わせる顔ないわ、って思って。今日あんま話せなかった」

「……そうだったんだ」

「痛かった、よな。ごめん」



私は大丈夫の意味も込めて、ううんと首を振った。
だけど、春斗はニコリともしない。


「俺、諦めるから」

「え?」


春斗から告げられた言葉の意味が分からず、私は目を何度も瞬かせる。

春斗は再度、口を開きしっかりと言った。



「真央梨の事、諦めるから」

「……」

「だから、安心して」

「……」

「それだけ言いたかった。これからは普通に話すから」

「……わ、かった」


私はなんとか、それだけ言うと春斗を見る事が出来ずに視線を伏せた。

もう言いたい事がないのか、春斗は音楽室から出て行こうとする。


扉に手をかけた時、ぴたりと動きを止めてこちらを振り返った。


それから。


「今日、飲みに行くんだろ?帰り、気を付けろよ」


春斗はそう言って少しだけ微笑むと扉を開けて出て行く。


それを私は黙って見つめた。
< 202 / 312 >

この作品をシェア

pagetop