肉食系男子に、挟まれて~アザーストーリー~【完結】
体育館付近になると、もうバンド演奏は始まってるのか音が漏れている。
「始まってるじゃん」
「本当ですね」
体育館の扉を開けると、わあっという生徒達の歓声と共に響く音。
その音量に少しだけ眉を顰めながら、中へと入った。
「安西ちゃん、私パス」
耳元でそう言った辻先生は、ごめんと手でジェスチャーして外へと出て行く。
どうやら、この音量に耐え切れなかったらしい。
私は一番後ろの列で、久住君が見える位置に立った。
キーボードを弾く、久住君。
その顔は固い。
それが私の所為ならちょっとどころでなく、悲しい。
私は久住君だけをずっと見つめた。
ふいに顔を上げた久住君と、私の視線が絡み合う。
目を真ん丸に見開くと、さっきまで固かった表情が緩んで行った。
嬉しそうに目を細めて笑った久住君に、胸がぎゅうっと締め付けられる。