肉食系男子に、挟まれて~アザーストーリー~【完結】
「では、聞いて下さい」
春斗が私に一度、視線を寄越す。
私もそれに頷いた。
静かに、ゆっくりと鍵盤に指を落として行く。
それと同時に他の先生方も音を奏でた。
練習を頑張った甲斐あって、うまく混ざり合ったメロディは綺麗だ。
その音に春斗の歌声が乗る。
生徒達の盛り上がりは最高潮だった。
春斗の綺麗で迫力のある歌声に、魅了された生徒も多いだろう。
私でも上手だと思った。
たった数分だけど、私達は失敗する事なく演奏しきった。
終わった瞬間に生徒達からの拍手と歓声。
「ありがとーございましたー!明日も皆楽しむ様にー」
春斗がマイクを手に持ち、笑顔でそう言った。
私はステージ下の生徒達を見つめる。
端っこの方に、久住君を見付けた。
私と目が合うと、目を細める。
そして、何度か口をパクパクとさせた。
……?何か言ってる?
首を傾げる私に、久住君は再度口をぱくぱくと開く。
“さ・い・こ・う・で・す”
そう、私には見えた。
何だよ、嬉しいじゃないか。