浮気彼氏【完】
寒さでかじかむ手で、そのキケンナモノを握りしめる。
もう、握力がほとんど無くなった右手は、そのキケンナモノを何度か取り落としてしまったけれど、ゆっくりと、落ち着いて、しっかり握りしめる。
そうして、またゆっくりと、そのキケンナモノを左の手首にあてて・・・力を込める。
ジワリと滲み出す・・・赤。
キケンナモノを伝って・・・私の手も伝って・・・流れ落ちる・・・温かな・・・赤。
私から生まれ落ちる温かな赤を見て、私はおもわず口元を緩めた。
・・・これで、終わるんだ・・・。
私から溢れる赤を見ながら、静かに身体を横たえる。
星はさっきよりも少なくなって来た。
もうすぐ朝日が昇るのかも知れない。
でも、私はそれを見たくない。
これでいい。
これが・・・いい。