浮気彼氏【完】
「愛!愛!愛!」
オレがどんなに名前を呼んでも、愛は目を覚まさなかった。
抱き締めても、氷の様に冷たい体温に、背中がゾクリとした。
ピクリとも動かない体や開かないまぶたに、全身が震えた。
『もしかしたら』と考えると、怖くて仕方がない。
そんな事、あり得ない。
愛の左手はベッタリと赤黒いモノが張り付いているけれど、既にその流れは止まっている。
愛、愛、愛・・・
「五十嵐君!」
気が付くと、俺の目の前には顔をしかめた高岡さんと、泣きじゃくる西尾が居た。
いや、よく見ると、高岡さんの後ろには赤い十字架を身に纏う、白い人達が・・・居た。