浮気彼氏【完】
「オレ、ずっと気付かなかったんだ。愛の辛い気持ちも、苦しい気持ちも、淋しい気持ちも、涙も、何もかも。ただ、愛と付き合えたことに浮かれて、一方通行の付き合いだったんだって事、気付けなかった。」
黎二は、ベッドの横に椅子を持ってきて、そこに座った。
「俺はずっと、愛を悲しませて、一人で涙を流させていたんだって思った。『別れよう』なんて、辛い判断を愛にさせた自分に腹が立った。もう、愛には辛い涙を流して欲しくないんだ。幸せになって、毎日笑顔で過ごして欲しい。・・・でもね、その幸せに、俺が不必要なら・・・オレは身を引こうと思ったんだ。」
ああ、黎二の言葉がイタイ。
そんな事を考える黎二の心を思うと、痛くてたまらない。
「なのに、愛。キミはそれでも涙を流すんだね。ねえ、愛。俺の望みは、愛が幸せになる事なんだ。その為なら、どんな力にもなる。支えにもなる。だから教えて、愛の望みは何?」
黎二は、いつの間にか私の右手を握っていた。
真剣な表情で私の右手をギュっと握る黎二は、まるで私を離したくないと訴えているようで・・・。
あぁ、私の望みはコレなんだって思った。