浮気彼氏【完】
「ねえ、黎二。私が眠っている間、すっと私を呼んでくれてありがとう。優しくて・・・暖かくて・・・凄く心地よかった。だけど、私が目覚めてからは1度もその声が聞こえなくて・・・。それまで私を守っていてくれたものが、急に消えてしまった様で、心細かったよ。」
「・・・愛・・・。」
「あのね、眠っている私は、それが黎二の声だと気付かなかったの。でもね、目を覚まして黎二を見た瞬間に分かったの。あの優しさも、暖かさも、全部全部黎二だったって・・・。わたしは、ずっと私を呼びかける声の人にどうしても会いたくて目を覚ましたのに、目を覚ました途端、その人は居なくなってしまって・・・。本当に淋しかった。」
私は、落としていた目線を黎二に向けた。
ようやく絡み合う私と黎二の視線に心が震える。
「黎二。私の望みは、こうして黎二と手をつなぐ事。ずっと側にいる事。目線を絡ませて会話をする事。だってね、私、黎二の事が大好きなの。だから、もし、黎二がまだ私を好きで居てくれるなら・・・私は、ずっと黎二の側に・・・。」
いきなり、黎二が私の手を引っ張って、その胸に私を押し当てた。
懐かしい温もり・・・。
爽やかなマリンの香り・・・。
・・・黎二の香り・・・。
「ありがとう。愛、ありがとう。こんなオレを好きになってくれて・・・本当にありがとう。愛が望んでくれるなら、オレは絶対に愛から離れない。ずっとずっと・・・愛にウザいって思われるくらい側にいるよ。愛、ありがとう。」
黎二は、ギュウっと、私を抱きしめてくれた。