焼けぼっくいに火をつけて
ドアの向こう側は、やはり寝室だった。
後ろ手でドアを閉めた先生は、さっきとは違う、貪るようなキスをして来た。
口の中を駆け巡る先生の舌に負けじと、わたしも自分の舌を絡める。

ブラウスの上から胸に触れていた手が腰に回る。ホックとファスナーが外されたスカートが、足元で輪になる。
体の前に戻って来た手は、次にブラウスのボタンを外しだした。
ブラウスを脱がされ、キャミソールとブラが剥ぎ取られたわたしは、ショーツだけの姿になった。
首に唇が当てられ、胸は先生の手を包まれた。

わたしも手を伸ばし、先生のシャツのボタンを外した。シャツを脱がし、ズボンからTシャツを引き出すと、先生は自分で脱いでくれた。

意地悪そうな先生の視線から逃れると、わたしはベルトに手を掛けた。手早くベルトを、ズボンのボタンとファスナーを外す。ズボンをずらし、先生を見上げると・・・、怒っているのか、不機嫌そうな顔が目に入る。

「随分手慣れてるな」
「へ・・・?」
「北見に仕込まれたか」
「北見くん?」

北見くんのことは、すっかり頭から抜けていた。どう答えたらいいのか迷っていると、先生は無造作に布団をめくり、わたしの手を引いてベッドに乗った。

「愛理・・・」

先生の熱い息が顔にかかる。大きな手が髪を撫で、額にキスが落ちて来た。

唇と手が、だんだんと下におりてくる。

額からまぶた、目尻、頬、耳たぶ、顎、首筋・・・

先生の動きに合わせるように、体が熱くなり、息が苦しくなる。熱を逃すように何度も大きな深呼吸を繰り返していると、フッと先生の笑い声が聞こえた。

「声、我慢しなくていいんだぞ」
「ん・・・」

我慢してる訳じゃない。息苦しくて、酸欠の金魚みたいに、必死に酸素を取り込んでいるんだ。
目を開いて先生を見ると、楽しそうに微笑み、わたしの肌に手のひらを這い回らせた。

文字通り、頭のてっぺんから足の先まで愛された。
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