焼けぼっくいに火をつけて
わたしが入学した栄明館高校は、県内1の進学校だ。
わたしは小学生の頃から頭がいいと言われていた。中学生になってからは、難関の栄明館への進学は楽勝みたいに両親や教師らから言われ、自分自身もその気になっていた。
けど、現実は甘くなかった。
さすが県内1の進学校。全然レベルが違った。同級生らと同じ勉強量では、全く追いつかない。授業について行くのも必死で、何とか成績を保っていたけど、壊滅的にダメだったのが数学。元々苦手だったのが、さらに苦手になった。
その酷さを見兼ねたのが、副担任の奥村先生だった。
「お前ら、副担任に恥をかかせるなよ」
クラスの中で、数学の成績が悪い5人が、放課後に奥村先生の補習を受けることになった。
奥村先生は教師になって2年目で、とにかく熱心。
授業は厳しかったけど、時々冗談を言ったり、若いのに飴と鞭を使いこなしていた。
整った顔をしてるけど飛び抜けてイケメンというわけではなく、背が高くて。
職員室でお弁当を食べる先生がほとんどだけど、奥村先生は教室や、たまに学食で生徒たちと食べたりと、わたしたちと距離が近づけようとしていた。
男子たちには良い兄貴分として、女の子には恋愛の対象として人気があった。
わたしも御多分に洩れず、奥村先生に恋心を抱いていた。
「愛理ちゃんいいなぁ、奥村先生の補習」
「全然良くないって。だって補習だよ、成績悪いって認定されちゃってるし」
「そうだね、奥村先生に頭悪いって思われたくないもん」
「ぐっ・・・」
図星なだけに、何も言い返せない。
わたしだって、先生に頭が悪いって思われたくない。けど、これが今のわたしの精一杯なんだから、仕方ないじゃない。
じゃあねと手を振った友だちの後ろ姿を見送って、教室に戻った。
わたしの他には、女の子1人と男子3人。
わたしはもう1人の女の子、藤澤紗絵ちゃんと並んで、配られたプリントに取り掛かった。
補習は通常の授業とは違って、空気が緩い。男子たちはそれぞれ1人で、わたしと紗絵ちゃんは相談しながら問題を解いていた。
先生は、
誰かが質問すると丁寧に教えていたけど
、ほとんどは空いている席に座って、本を読んでいた。
カシャ
ケータイのシャッター音が教室に響く。
紗絵ちゃんと先生を隠し撮りしてたけど、静かな教室の中では、思ったより大きな音が出てしまった。
「お前ら、遊んでないで真面目にやれ」
当然先生にも聞こえていて、2人揃って頭をコツンと叩かれた。けど、本気で怒ってないのは分かってたから、わたしと紗絵ちゃんはクスクス笑いながら、ケータイをバッグに入れた。
「愛理、補習が終わったらランニング行くんでしょ?一緒に行こうよ」
「う、うん・・・」
紗絵ちゃんはショートカットで背が高い。ちびっ子のわたしとは、15cm差がある。陸上部で頑張ってるけど、日焼けしない体質なのか、薄っすらと茶色くなってる程度だ。
スポーツバリバリな紗絵ちゃんと一緒にランニングなんて、絶対に無理・・・。
「先生!今日も終わった順に帰れるんですよね?」
「おー、だから早くしろよ」
「よーし、サッサと片づけちゃお!」
今まで一緒にふざけてたのに、あっという間に紗絵ちゃんは真剣な顔になった。
紗絵ちゃんは同級生では珍しく、先生にはあまり興味がないらしい。後でさっき撮った写真を貰おう。
わたしは小学生の頃から頭がいいと言われていた。中学生になってからは、難関の栄明館への進学は楽勝みたいに両親や教師らから言われ、自分自身もその気になっていた。
けど、現実は甘くなかった。
さすが県内1の進学校。全然レベルが違った。同級生らと同じ勉強量では、全く追いつかない。授業について行くのも必死で、何とか成績を保っていたけど、壊滅的にダメだったのが数学。元々苦手だったのが、さらに苦手になった。
その酷さを見兼ねたのが、副担任の奥村先生だった。
「お前ら、副担任に恥をかかせるなよ」
クラスの中で、数学の成績が悪い5人が、放課後に奥村先生の補習を受けることになった。
奥村先生は教師になって2年目で、とにかく熱心。
授業は厳しかったけど、時々冗談を言ったり、若いのに飴と鞭を使いこなしていた。
整った顔をしてるけど飛び抜けてイケメンというわけではなく、背が高くて。
職員室でお弁当を食べる先生がほとんどだけど、奥村先生は教室や、たまに学食で生徒たちと食べたりと、わたしたちと距離が近づけようとしていた。
男子たちには良い兄貴分として、女の子には恋愛の対象として人気があった。
わたしも御多分に洩れず、奥村先生に恋心を抱いていた。
「愛理ちゃんいいなぁ、奥村先生の補習」
「全然良くないって。だって補習だよ、成績悪いって認定されちゃってるし」
「そうだね、奥村先生に頭悪いって思われたくないもん」
「ぐっ・・・」
図星なだけに、何も言い返せない。
わたしだって、先生に頭が悪いって思われたくない。けど、これが今のわたしの精一杯なんだから、仕方ないじゃない。
じゃあねと手を振った友だちの後ろ姿を見送って、教室に戻った。
わたしの他には、女の子1人と男子3人。
わたしはもう1人の女の子、藤澤紗絵ちゃんと並んで、配られたプリントに取り掛かった。
補習は通常の授業とは違って、空気が緩い。男子たちはそれぞれ1人で、わたしと紗絵ちゃんは相談しながら問題を解いていた。
先生は、
誰かが質問すると丁寧に教えていたけど
、ほとんどは空いている席に座って、本を読んでいた。
カシャ
ケータイのシャッター音が教室に響く。
紗絵ちゃんと先生を隠し撮りしてたけど、静かな教室の中では、思ったより大きな音が出てしまった。
「お前ら、遊んでないで真面目にやれ」
当然先生にも聞こえていて、2人揃って頭をコツンと叩かれた。けど、本気で怒ってないのは分かってたから、わたしと紗絵ちゃんはクスクス笑いながら、ケータイをバッグに入れた。
「愛理、補習が終わったらランニング行くんでしょ?一緒に行こうよ」
「う、うん・・・」
紗絵ちゃんはショートカットで背が高い。ちびっ子のわたしとは、15cm差がある。陸上部で頑張ってるけど、日焼けしない体質なのか、薄っすらと茶色くなってる程度だ。
スポーツバリバリな紗絵ちゃんと一緒にランニングなんて、絶対に無理・・・。
「先生!今日も終わった順に帰れるんですよね?」
「おー、だから早くしろよ」
「よーし、サッサと片づけちゃお!」
今まで一緒にふざけてたのに、あっという間に紗絵ちゃんは真剣な顔になった。
紗絵ちゃんは同級生では珍しく、先生にはあまり興味がないらしい。後でさっき撮った写真を貰おう。