焼けぼっくいに火をつけて
腹が立つのと悲しいのとで、わたしの頭の中はぐちゃぐちゃだ。
早く帰りたい。
テーブルに戻ろうとしたわたしの腕を、先生が掴んだ。
「いい加減にっ・・・」
「北山」
先生を振り払おうとしたのに、わたしはまた壁に押し付けられた。
「何するんですかっ!」
「あの時、」
「えっ?」
「あの時、どうして来なかった」
「あ・・・」
あの時・・・
卒業式のことだ。
「お前の声が聞こえたから、来るもんだと思ってた」
「あ、あの・・・」
「北見が邪魔したか」
答えなかったけど、泳ぐわたしの目で分かったはずだ。
気づくといつの間にか、脚の間に先生の右脚が入り込み、両脚でわたしの右脚を挟んでいる。
(逃げられない)
誰か来たら逃げる隙もできるのに、どうしてこんな時に限って、誰も来ないの!?
焦るわたしを尻目に、先生は体を押し付けて来た。
「お前は北見を取った。俺のことは、なかったことにしようとしている。俺はお前のこと、忘れたことなかったのにな」
「わ、忘れてなんか・・・」
「だよな」
口元を歪めた先生は、空いた手でわたしの頬を撫でた。ゾクリと背中に冷たいものが走る。
「初めての男を、忘れるはずないよな」
身体の血液が全部、顔に流れ込んだように熱くなる。
「うぬ・・・、んぐっ」
自惚れないでと言いたかったのに、先生の唇に口を塞がれて、言葉にならなかった。
「いや・・・」
先生の唇から逃れようとしたけど、先生は執拗に追って来る。
「やめ、て・・・」
「そうだな、誰か来たらマズイよな」
どうにか体を捩って唇を離すと、わたしの髪を撫でながら先生は呟いた。
ホッとして気を緩めたと同時に、女子トイレに引き摺り込まれた。
先生はわたしの腕を掴んで個室に押し込み、素早く鍵を締めた。
「どうしてこんなことするんですか?」
「男子トイレの個室が閉まったままだと怪しまれるだろ」
女子トイレだって、閉まったままだと怪しいですよ!
って、そんなことを聞きたいんじゃない。
逃れようともがくわたしを、先生は壁に押し付けてキスをした。
先生の胸を押し返そうとした時、ギッとドアが開く音がして、誰かがトイレに入って来た。
「やっぱりいないね」
「愛理ちゃん、どこに行っちゃったのかしら」
田岡先生と川井さんだ。
「声を出したら気づかれるよ」
耳元で囁いた先生は楽しげにわたしを見ると、またキスをした。
「奥村さんも戻って来てないしね。えりりんと一緒にいるとは思うけど」
「愛理ちゃん狙いですよねー、奥村さん」
「でしょうね。わざと怒らせるようなこと言っちゃったりして。あの人、けっこう子供っぽいよね」
田岡先生と川井さんは、出て行かないで、話を始めた。その間にも先生はキスを止めようとしない。それどころか、わたしの中に舌を入れ、激しく動き回す。
わたしはわたしで、先生に恋してた頃の気持ちを取り戻し、抵抗していたはずなのに、先生に身を任せていた。
早く帰りたい。
テーブルに戻ろうとしたわたしの腕を、先生が掴んだ。
「いい加減にっ・・・」
「北山」
先生を振り払おうとしたのに、わたしはまた壁に押し付けられた。
「何するんですかっ!」
「あの時、」
「えっ?」
「あの時、どうして来なかった」
「あ・・・」
あの時・・・
卒業式のことだ。
「お前の声が聞こえたから、来るもんだと思ってた」
「あ、あの・・・」
「北見が邪魔したか」
答えなかったけど、泳ぐわたしの目で分かったはずだ。
気づくといつの間にか、脚の間に先生の右脚が入り込み、両脚でわたしの右脚を挟んでいる。
(逃げられない)
誰か来たら逃げる隙もできるのに、どうしてこんな時に限って、誰も来ないの!?
焦るわたしを尻目に、先生は体を押し付けて来た。
「お前は北見を取った。俺のことは、なかったことにしようとしている。俺はお前のこと、忘れたことなかったのにな」
「わ、忘れてなんか・・・」
「だよな」
口元を歪めた先生は、空いた手でわたしの頬を撫でた。ゾクリと背中に冷たいものが走る。
「初めての男を、忘れるはずないよな」
身体の血液が全部、顔に流れ込んだように熱くなる。
「うぬ・・・、んぐっ」
自惚れないでと言いたかったのに、先生の唇に口を塞がれて、言葉にならなかった。
「いや・・・」
先生の唇から逃れようとしたけど、先生は執拗に追って来る。
「やめ、て・・・」
「そうだな、誰か来たらマズイよな」
どうにか体を捩って唇を離すと、わたしの髪を撫でながら先生は呟いた。
ホッとして気を緩めたと同時に、女子トイレに引き摺り込まれた。
先生はわたしの腕を掴んで個室に押し込み、素早く鍵を締めた。
「どうしてこんなことするんですか?」
「男子トイレの個室が閉まったままだと怪しまれるだろ」
女子トイレだって、閉まったままだと怪しいですよ!
って、そんなことを聞きたいんじゃない。
逃れようともがくわたしを、先生は壁に押し付けてキスをした。
先生の胸を押し返そうとした時、ギッとドアが開く音がして、誰かがトイレに入って来た。
「やっぱりいないね」
「愛理ちゃん、どこに行っちゃったのかしら」
田岡先生と川井さんだ。
「声を出したら気づかれるよ」
耳元で囁いた先生は楽しげにわたしを見ると、またキスをした。
「奥村さんも戻って来てないしね。えりりんと一緒にいるとは思うけど」
「愛理ちゃん狙いですよねー、奥村さん」
「でしょうね。わざと怒らせるようなこと言っちゃったりして。あの人、けっこう子供っぽいよね」
田岡先生と川井さんは、出て行かないで、話を始めた。その間にも先生はキスを止めようとしない。それどころか、わたしの中に舌を入れ、激しく動き回す。
わたしはわたしで、先生に恋してた頃の気持ちを取り戻し、抵抗していたはずなのに、先生に身を任せていた。