焼けぼっくいに火をつけて
スカートからブラウスの裾が引き抜かれ、先生の手が入って来た。ゆっくりと上って来た手は、下着に包まれた胸を揉み始めた。

「ふ・・・ぅん」

漏れそうになった声を、先生のシャツの袖にしがみつきながら必死に堪える。
それに気を良くしたのか、先生は右膝で、わたしの脚の間を擦り上げた。

「んんんーっ」

声を押さえつけるように、先生のキスがさらに深くなる。

もうダメだ。これ以上、自分を抑えることができそうにない。
先生の首に腕を回して、自分から体を密着させた。

田岡先生と川井さんの声が遠ざかり、トイレから出て行く気配がした。気づかれずに済んだみたいだ。いや、たぶん気づかれているだろう。
それさえも、もうどうでもいい。

先生はブラウスを一気に捲り上げると、顕になった胸に唇を寄せた。

「せん・・・せい・・・」

地肌を這う先生の唇と手に、体の奥で火が燻り始めた。熱を逃したくて先生の髪に指を差し込み、強く頭をかき抱いたけど、火は強くなるばかりだ。

「う、ん・・・、あぁ・・・」

思わず声を出すと、不意に先生が離れた。

「先生?」
「悪い」
「え?」

体内の炎を燻らせたまま顔を見上げると、先生はサッと目を逸らした。

「悪い。俺も、もう限界。荷物を取って来るから、時間差で出て来い」

それだけ言うと、先生はわたしを残して、トイレから出て行った。

身なりを整えると、わたしも周りを伺いながらトイレを出て、元のテーブルに戻ろうとした。

足を踏み出したところに先生が、わたしのコートとバッグを持った田岡先生を連れて戻って来た。
田岡先生、物凄くニヤニヤしている。

「えりりん、気分が悪くなったんだって?大丈夫?」
「え、あぁ。うん、何とか」

気分が悪くなったことになったんだ。

「そう。じゃあ早く帰って休みなさい」

コートとバッグを手渡しながら言うけど、田岡先生の顔を見れば信じてないのは一目瞭然。他の人たちも同じだろう。

「うん、ありがと」

急いでコートを羽織ったわたしの腰に、奥村先生は手を回した。

「じゃ行こうか。北山、大丈夫か?」
「はい・・・」

押されるように店の外に出て歩き出した。

「えりりーん、気をつけてね!あったかくして寝るんだよー!」

振り返ると、外までついて来ていた田岡先生が、ブンブンと手を振っている。

恥ずかしいんだけど・・・。
振り返って小さく手を振った。

「ガンバレー」

何を、頑張れと言うんだろう。
俯いたわたしの上から、クスクスと奥村先生の笑い声が聞こえた。
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