王様の告白
 その様子に、思わず『失礼しました~~』と社長室を出て行こうとした時だった。

 彼は、広い室内をたった三歩で横切って、俺に近づいてきた。

 自分の情けない姿を見られて、相当腹が立ったらしい。

 普段温和な彼の鬼の剣幕に、ぎょっとした俺は、思わず、二、三歩後ずさる。

 と。

 ごん、と音を立てて、俺が壁にぶつかるのと、彼がドン、と壁に手をついたのが同時だった。

「うぁっ! すみません、社長!
 私は、決して社長の『壁ドン』練習風景を覗きに来たわけではなく……!」

「宗次、好きだ! オレのモノになれ!」

 ……へ?

 イマナントオッシャイマシタ?

 どたばたしているうちに叫ばれた、言葉の意味が全く理解できずに、俺は目を丸くした。

「えっと……社長?」
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