BOTANYUKI
LUCA


「ほら!葵ちゃん見て見て!雪だよ!」


カーテンをさっと開ける音がしてルカの弾んだ声が聞こえた。

窓から差し込む光を眩しく感じながら時計の針を見るとまだ朝の6時を指している。

「ちょっとルカ!今何時だと思ってるの?」

唸りながらそう言ってみるが、ルカには聴こえないらしい。

「積もるかなぁ??」

まるで少年のように曇った窓ガラスに鼻をくっつけて外を眺めている。

ルカの言う通り窓の外を良く見ると小さな雪がチラチラ舞っていた。
眩しいと思ったのは太陽の光ではなく、その雪を降らせている雲がまるでまだ何も描かれていないキャンバスのように真っ白だったからだ。

「ちょっと、こら!聞いてるの?」

もう一度嫌言を言ってみる。
私の声がやっと聞こえたのかルカは振り返った。

「ねぇ、今から外に出かけようよ!」

その瞳はやはり少年のようにキラキラと輝いていた。そして案の定帰ってきた返事を聞く限り、私の苦言は彼には聞こえていないらしい。





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