BOTANYUKI
「ね!行こうよ!」
ルカが高級な青磁のように蒼い瞳を輝かせながら言う。
流石、お祖父さんがロシア人のクウォーターであるルカは日本人とは少しかけ離れた容姿をしていた。
乳白色の肌に、明るめに見えるフワリとした天然パーマの髪の色はやはり私達とは少し違うことを教えてくれる。
ルカは窓ガラスに擦り付け過ぎて少し赤くなった鼻を得意気に擦った。
「嫌よ」
私はルカにそうひとこと言い放つと、やっとベッドから起き出して煙草を口に加え火をつけた。
「あ~!もう葵ちゃんまたタバコ吸って!不健康だぞ!」
ルカが私を咎めながら折角口に加えたばかりの煙草を取り上げる。
「こら!ニコチンが足りなくなるでしょ!」
怒る私を尻目に、ルカは煙草を灰皿に押し付けあっさりと揉み消してしまった。
「ああ...私のニコチンが...」
私の反論も虚しくルカはニコリと微笑む。
ルカが私の家に転がり込んで来たのは2年前のことだ。
その日は私の最愛の弟、
タケルのお葬式の日だった。