BOTANYUKI
私達三人に転機が訪れたのはタケルが当時付き合っていた彼女と婚約した時だ。
私はそれを機にタケルと一緒に暮らしていた部屋を出て独り暮らしを始め、ルカは前々から誘われていたモダンバレエのドイツ留学を決めた。
こうして私達三人はバラバラになった。
今思えば、もしそのまま何事もなく時が過ぎていれば私たちはもしかすると、もう少しマトモな人生を送っていたかもしれない。
だけど運命の神様は無情にも私たちのことをそのまま放っておいてはくれなかった。
それはその年の気温が初めて氷点下まで下がったある寒い冬の朝のことだった。
その日の朝早く、
タケルは首を吊って自殺をした。
その場所は私達が三人で良く遊んでいた公園で、その一画には大きな楠があった。
タケルはそれにぶら下がっているところを発見されたのだった。
後に分かったことだが、タケルの婚約者は別の男性と駆け落ちしてタケルのことをゴミのように捨てていた。
タケルはそれを苦に自殺したのだろうと思われる。
だけど、後からそれが分かったとしても残された私にできることなんて何ひとつない。全ては無意味な事実でしかないのだ。
タケルが亡くなった後タケルの部屋に行くと、部屋の中には何も残されていなかった。亡くなる前にキチンと身辺整理をしたのだろう。
私はそれが妙にタケルらしくて、部屋を一目見るなり苦笑したのを覚えている。
ガランとしたタケルの部屋に残されていたのは私とルカに当てた手紙が一通。
内容は私にはごめんね。
ルカには姉を頼む。
とだけ書かれていた。
それだけだった。