BOTANYUKI
朝起きた時よりも雪が少し多くなっているような気がする。私とルカは大きな木の下で身を寄せあった。
「ねぇ...ルカ」
「ん?」
「いつまで私の所にいるの?ドイツには帰らなくて良いの?」
「うん」
この無意味な会話をこの二年間で何回しただろう。
そして、いつものように答えはない。
私は答えが出ないことに少し苛立ちを覚えポケットにある煙草に手を伸ばした。
これもいつものことだった。
ちょうど煙草をポケットから引っ張り出した時、強烈な旋風が粉雪を巻き上げて私達の方に向かってきた。
私は咄嗟のことに目を瞑った。
その瞬間、木に何かが当たる音がして空気の流れが止まった。
予想していた風が来ず恐る恐る目を開けると、そこには私の前を塞ぐようにして立つルカの姿があった。
風を避けるために盾になってくれたのだろう。私の顔の横に手を付いて顔を伏せ必死に何かに耐えている。
「ゴメンね、ルカ。大丈夫?」
心配になり顔を除きこむと、ルカは鼻の頭を赤くしながら
「寒い」
と言って無邪気に微笑んだ。