BOTANYUKI
BOTANYUKI

ルカは思ったよりも背が高く、それはまるで厳重な要塞に守られているようだった。

「ルカ、冷えちゃうから...もう帰ろうよ」

だけど私はルカとの距離の近さに戸惑い、咄嗟にそれから逃れようとした。


「待って」

その声に顔をあげると、
ルカが真剣な眼差しで私を見ていた。

新雪から反射する光を写したルカの瞳が再び青磁のような蒼い色になる。

ルカの瞳は真っ直ぐ私に見据えられていた。その瞳は息を飲むほど美しい。
私はその瞬間、ルカも私の中にいるタケルの存在を感じたのだと悟った。


「ルカ...」


私がそう言うとルカはニコリと笑って私が持っていた煙草を取り上げた。

「何度も言わせないで...煙草は不健康だよ」

ルカはそう言うと、私のおでこに自分のおでこをくっつけた。ひんやりと冷たいルカのおでこが熱った顔に心地良い。


「体...大事にしてよ...葵ちゃん...」


ルカが私に僅かに聞こえるほどの小声でポツリと呟く。


「......」


「僕にはもう...葵ちゃんしか...いないんだから...」


小刻みに震えるルカの声はまるでそれ自体が泣いているみたいだ。


「...お願いだから...」


ルカは消え入りそうな声でそう言った。






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