【壁ドン企画】 わがままな彼の甘い罠
*



壁ドンしたのは私の方だった。
その理由は。

「なんで私にだけ優しくしてくれないの?!」

甘い理由じゃなくて申し訳ないけれど、もう限界だった。

社内恋愛という、ひたすらどこまでも甘い響き。プリンパフェとか、そういう単語と並べてみても決してひけをとらない甘い関係。

そんな胸やけしそうなくらいの関係にあるにも関わらず、彼が社内で私にだけ優しくしてくれないという、大変深刻で甘くない事案が発生したのはもう半年以上前。

それでもまぁ……まぁまぁまぁ。私は彼が好きだし、彼だって私が好きなんだろうし。会社での態度なんて別にどうでもいいじゃない。
そうやって自分自身に言い聞かせ、震えながらも耐えてきた半年。

ついに私の怒りが爆発した結果、営業帰りの彼をオフィスで発見し、使われていない会議室に拉致。
適当に引っ張り出したパイプ椅子に彼を座らせ、壁ドンしたというのがここまでの経緯だ。
彼を座らせたのは、私が優位に立ちたかったからという理由に他ならない。

傾き夕日と呼び名を変えた太陽が、オレンジ色とも黄色とも取れる色で会議室を染め上げていた。
背中から日差しを受ける私の影が彼にかぶさる。

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