【壁ドン企画】 わがままな彼の甘い罠
振り切れた怒りを必死に訴える私を、彼の無表情な瞳が見つめる。
女装すれば多分、女子社員含め、社内一可愛くなれるであろう彼の、黒目がちな瞳。
可愛らしくも整った顔立ちは、それこそプリンパフェよりも甘い、極上マスク。
それなのに、無表情っていう……宝の持ち腐れ的ギャップには恐らく女子社員の大半が萌えてるに違いない。
もちろん、言うまでもなく私が一番萌えてますけど。
顔身体はもちろん、髪質から腰のライン、さらには喉仏の出具合とか、そんな細かい部分まですべてが好きで、彼に見つめられればそれだけで私は幸せになれるくらいですけど。
そんな大好きな彼だから、いつもなら、じっと見つめられただけで、く……っと胸を鷲掴みにされて白旗あげちゃうところだけど、きっとそういう私の甘やかした態度もよくなかったんだと懸命に気持ちを持ち直す。
男は女が育てるものだと、誰か恋愛アドバイザーみたいな人が言っていたし。
だったら、私が今から厳しく躾けて、社内でも彼女に優しくできる男に育ててやろうじゃない。
問題は、ひとつ。
私には向けない優しさを、どこの馬の骨とも分からない他の女に〝だけ〟向けるのは違うだろって事だけ。
いっくら100%好みの彼でも、それは見逃せない。
「なにが?」
「だから、私にだけ優しくしてくれないのはなんでって」
「そう? 休みの日会う時はいつもモーニングコールして起こしてあげてから迎えに行ってるし、コンビニで買うデザートも選ばせてあげてるけど。
部屋に散らかしてる本とか服も片づけてるし、寝オチした時には服も着せてあげてるよ」
「今はそういう話じゃない。社内でに限っての話をしてるの」