【壁ドン企画】 わがままな彼の甘い罠


そう。隠しているならまだ納得のいく彼の嫌がらせのような冷たさだけど、私たちの関係はオープン。
周りだって知ってる。

だからこそ、段ボールを持ってもらった女子社員にクスっと嫌な感じの笑みを浮かべられながら見られたりしているわけで。
「彼女なのに持ってもらえないの? ぷぷ」「私の方が大事にされてない? クスー!」みたいな視線を送られるわけで。
私は、重たい段ボール持ちながらそんな屈辱にも毎回耐えているわけで。

なんか……そういう。とにかく色々が爆発したってわけだ。

「という事で、今から優しくしてください」

見下ろした形で言った私を、彼はじっと見上げながら「嫌だ」と平気で言ってのける。
大変。教育しないと。

「拒否権なんてありませんから」
「あのさ、プライベートで冷たくしてるわけじゃないんだから、社内ではどうでもよくない?」
「よくない。私にも平等に優しくして欲しい。だって……」
「〝だって〟禁止」
「……なぜなら、周りの子たちに、彼氏に優しくもしてもらえない可哀想な子って思われてるし。
それだけならまだしも、あのふたりそろそろ危なそうだから、次狙っちゃおうかなぁ、みたいな会話がそこら中で繰り広げられてるのが耐えられない。
しかもそれを、私の目の前でニヤニヤしながら言われるのとか! 我慢ならないっ!」
「言いたいヤツには言わせておけばいいんじゃない? 事実じゃないんだし」
「なんで……ねぇ。私、そんな無理なお願いしてるわけじゃないじゃん……。
ただ、書類を渡す時には顔じゃなくて手に、ふわって渡して欲しいって言ってるだけなのにそれがそんなに難しい……?」

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