【壁ドン企画】 わがままな彼の甘い罠


情けなくなりながらも懇願するように見ていると、彼は少し考えた後頷く。

難しいらしい。
書類を手に「はい」と渡す事が。

「なんでそんな頑ななの……。なんかもう……私たち、理解し合えないのかもしれない」

優しくして欲しいってお願いしている自分が可哀想に思えてきて黄昏ながらそう呟く。

だって、理解できないもん。私には。
好きなら、彼女には優しくしたいって思うものなんじゃないの?
顔に書類ぐりぐりしたりスマッシュしたりしないものなんじゃないの?

なんなのもうっ!

「じゃあ分かった! じゃんけんに私が勝ったら……」
「俺は、何されてもどうお願いされても、社内でおまえに優しくはしない。
だって、俺がちょっとでも優しくしたら絶対嬉しそうな顔するでしょ」
「それはうん」
「社内で優しくしたら、そういう顔、他のヤツらにも見られちゃうじゃん」

「だから」と、軽いため息をつきながら言う彼に、ポカンとする。

だから……って。なんだそのくだらない理由。
私が嬉しそうな顔してたところで誰も見ないし、見られたって、うわ、なんだこいつって思われるくらいなのに。

なのに……それでも見られたくないの?


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