【壁ドン企画】 わがままな彼の甘い罠
「〝だって〟は可愛いから禁止。
それに、知ってたでしょ。俺が勝手な男だってくらい」
近づいてきた彼に、触れるだけのキスをされて、それでもぼんやりしていると。
彼はもう一度近づきながら言う。
「だから、例え理解し合えなくても別れないよ。別れないし、これからも会社では優しくしない」
勝手な事を言いながら再び重なった唇が、私のそれを開き啄む。
そこから入ってきた舌に思わず肩が跳ねると、パイプ椅子が後ろの壁にぶつかり小さく軋んだ。
咥内を這う舌に頭の中にぞくぞくとした感覚が生まれ背中をなぞるように落ちていく。
ゆっくりと合される舌と彼の息遣いに気が遠くなる。
何度も角度を変えて塞がれる唇に、いつの間にか彼のワイシャツを握りしめていた。
少しだけ目を開けると、男の顔をした彼がそこにいて。
またぞくりと身体が疼く。
「ふ、ぁ……ん……っ」
閉じ込められた中で受けるキスに感じるとか。本当にマゾだったらどうしよう。
そんな事に一抹の不安を覚えながらも、執拗なキスに思考回路を溶かされていた時。
彼が言った。
「〝私は会社でちっとも優しくされなくても大好きです〟」
とろんとした瞳を開けると、間近から彼がもう一度言う。
「ほら、言って。〝私は――〟」
「……ん? え?」
「まだ足りない?」
「え、なにが……ん、ぅ……っ!」
再びされた濃厚なキスに、ああもうこれは言わない限り終わらないんだと完全に溶けきった頭で悟ったのは、そんな事が数回繰り返された後だった。