【壁ドン企画】 わがままな彼の甘い罠
彼は多分……私が、理解し合えないとか言った事を、ちょっと怒ってる。
無表情ではあるけど……多分。
「あ……私、は……会社で――」
色々丸め込まれた感じはしながらももう何も考えられない頭にさせられ、そのまま復唱すると。
彼はこめかみのあたりに唇を押し付けながら言う。
「〝だって、も、もう言いません〟」
「……言い、ません」
「〝会社でおでこ出しません〟」
「……出しません」
「一緒に住む?」
「住む……えっ?」
驚いて見ると、相変わらず無表情のままこちらを見る彼と目が合って。
もう一度聞かれる。
「一緒に住んでくれる?」
「住……? う……うん?」
「決定ね」
おでこから始まり、色々と諸々と未だに処理できていない頭。
困惑しすぎて何から片付けたらいいのか分からずただ戸惑っている私に。
「家でだったらとびきり優しくしてあげる」
彼はわずかに微笑みながらそう言った。
ただ、社内で人並みに優しくされたいと願っただけなのに。
なんでだか同棲が決まってしまって。
教育するはずが逆にされてる事に私が気が付くのは……彼がてきぱきとアパート契約を済ませた後だった。
社内恋愛よりも甘い響きの同棲に、今度こそ無事胸やけできたのは、また別のお話。
END