愛とか恋とか嫁だとか。
「承知しました。

えーと、どのくらい切ります?」



……あれ?


身構えていた身体の力が段々抜けてくる。


「あ、えっと、どのくらいでも……」


言ってからしまった。と思う。


相手の意見を尊重するふりをして、自分で考える事を放置してきた、悪い癖。


ちら、っと見ると案の定鏡の向こうで困った顔の斉野さん。


「えーと、じゃあ、耳の下くらいで……」


「少々お待ちください」




一旦離れた斉野さんが、雑誌を数冊手にとって戻ってくる。


「こんな感じとか……あと。これも、青山さんの感じに合うかも」


久し振りだな、こんな感じ。
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