愛とか恋とか嫁だとか。
「……美味しそうだなー、かわいいなー、ちゅっ、みたいな」


……みたいな、じゃねーーーーっつの。


「じゃあ篠塚君は混み合う電車内で至近距離でぎゅう詰めの脂ぎったおっさんサラリーマンが口許に肉汁つけて明らかに『ステーキ食べて来ました』って感じだったらとりあえずチュッとしとくわけ?」


……早口で一気に言ってから自分でもちょっと後悔。



篠塚君が思いっきり馬鹿にしたような顔で、


「……するわけないじゃないっすか……」


いや、そりゃそうですけど。


そこで、「しますね」って言われても引くけど。



全然悪びれてない篠塚君は、人の唇を奪っておきながら、何故か優位に立っていて。


落ちた新商品のチョコレート味のグミを拾いながら、


「あの人。なんなんですか?」


冷静なトーンで言葉を発する。
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