愛とか恋とか嫁だとか。
沢山の事を考え込んでぼんやりしている内に、航平がそっと手を離す。


「ごめん、大丈夫か?」


「だーいじょうぶ。青山は、気にしすぎ。あたし、モテるからご心配なく」


あたしの言葉に、航平が安心したように笑う。



今のこの関係が崩れることなんて、あたしも航平も望んでいない。




あたしは、脳内ですっかり″青山″呼びを止めてしまっていることに、気がついていなくて。


事務的に、Tシャツの必要枚数とサイズとを確認して、納品の状況を伝える旨をメモに記し、航平を送り出した。


スーツの背中が見えなくなると、急に掴まれていた手首が熱を持っているように感じられて。


何故か咄嗟に、ポケットに手を突っ込んだ。


かさり、と手に触れたものはさっきのチョコレートバーで。


チョコレートよりも、喉が渇いたな……と思いながらあたしはまた、商品を整え始めた。
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