愛とか恋とか嫁だとか。
「ご記入お済みですか?

ご指名ありますか?こちらへどうぞ」


受付にいた可愛らしい女の子がてきぱきと進めていく。


初めて来たのにご指名あるわけないじゃない……と、思いつつ。


「あ、特にないです」


小さく答え、カードを手渡す。



案内されたふかふかの椅子に腰掛け、磨かれた鏡で嫌と言うほどくっきりと自分の顔を見せつけられる。


……なんか、老けたなー。


こんな明るい光の下で見ると、ぎょっとするくらい、知らないあたしが映っている。


昔は、美容室が、大好きだった。


沢山褒められて。


出るときは、来たときよりずっと素敵になっていて。


そのまんま、お出かけするのが好きだった。
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