居場所
「まっ、俺が無理矢理、高校に行かせたからな。…ごめんな」
そう言った山ちゃんは申し訳なさそうに顔を顰める。
「えっ、山ちゃん何で謝るの?」
「だって…」
「山ちゃんは全然悪くないよ?」
「だったらいいけど。ゆっくりしていきな」
沈んだ顔でニコッと笑った山ちゃんはゆっくり腰を上げてカウンターまで足を進めて行く。
その山ちゃんから視線を目の前に置かれたソーダー水に移し、そのソーダー水をストローでクルクルと混ぜた。
クルクルと回す度、グラスの中の氷がカラカラ音をたてて回る。そのソーダ水をひと口飲んであたしは窓の外を見つめる。
見てすぐにあたしの目に飛び込んできたのは小さな子猫。その子猫は小さく背中を丸めて行き場を無くした様に寂しそうな顔をして遠くを見つめてた。
その子猫が何だか今の私とまったく同じ様に見えて、子猫を見つめる度に何だか目が熱くなってくる様に思えた。
きっと、あの子猫も居場所がないに違いない。そう勝手に思うのはただ、あたしが寂しいから何だろうか…
それさえも分かんなくて、あの時からあたしの居場所なんて何処にもない。