キスしなかったのは……
汗ばむ肌
お腹の奥の方からわき上がる疼き。
堪えることのできない乱れた声
滑らかに私の体を動き翻弄する柔らかな唇の感触
その全てが鮮明に思い出されて、カーっと頬が熱くなる。
動揺する私を気にすることもなく……というよりは、楽しんでいるようにも見える課長は、スルリとあたしの頬を一撫でする。
「そんな初な反応してまた俺を煽るの?それとも、男を弄ぶのが趣味なの?」
「ちがっ……」
「じゃあ、あれは合コンじゃないの?」
課長の視線の先は、先程まであたしの座っていた席があるのだろう。
「あ…れは、ずっと前から決まってて、どうしてもキャンセルできない状況で──」
それは紛れもなく言い訳なんだけど、でも、言い訳せざるを得ない。
だって……課長に誤解されたままは嫌だ。