キミには言えない秘密の残業
「・・・ごめん、なさい。振られたのって残業のせいだよね?あたしが故意的に残業をさせてたから」



もう、観念しよう。明日からは残業しなくても済むよ。須永がそう言えば彼女と仲直り出来るはず。結局、須永のためになんて言いながら自分のことばかりだった、あたし。


須永があたしみたいな思いをしなければいいなんてただの綺麗事。本当はあたしが須永と一緒にいたかっただけ。



「・・・須永がね、昔のあたしみたいな思いをしてることを知って何とか出来ないかなって思ったの。辛いの分かるから。でも、だからって私情を仕事に挟むのは良くないよね。本当にごめんなさい。あたしのことは上司に報告してくれていいし、須永の気の済むようにしてくれていい。だから・・・」



自分が何を言ってるかわからない。ただ口をついてくる言葉を呟くだけ。俯きながら。そんなあたしの言葉を遮るように須永がドンと壁に両手をついた。


恐る恐る顔を上げると須永の顔が触れるくらい近くにあって目を逸らすことすらも出来ない。



「好きになってもいいですか?」
< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop