キミには言えない秘密の残業
目を大きく見開く須永の言葉。パチクリと瞬きを繰り返す私に須永は言葉を続ける。



「俺、本郷さんと二人の残業毎日楽しみになってました。最初は確かに毎日、なんで俺だけ残業なんだろうとかそんなことを思ったりもしてました。でも、残業中に見せてくれる本郷さんの優しさに惹かれてたんです。それに今だって聞いてもいないことまで話してくれて自分を責めてる本郷さんのこと愛しくてたまらないって思ってる」



あたしが逃げ出すことがないと悟ったのか少し表情を崩した須永は片手を壁から離し、ポケットから携帯を取り出しそれを耳に当てた。



視線はあたしに向けたままあたしの目の前で須永はポツリと携帯の相手に一言だけ告げたんだ。


「好きな人が出来たから別れよう」



淡々とした口ぶりでいつもの須永の声色よりも遥かに低い声。


相手の言葉を待つこともせずに彼は携帯を耳から離し、ついていた手も壁から離すとそっとあたしの横に並んで座った。
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