鈴が咲く【前編】
「黒板に書いてある問題を解きなさい!!」
そう声を荒らげる。
あ~あ...
今日の獲物用に黒板に書いた問題は
咲を使った見せしめにするわけ...
普通なら戸惑うか、嫌がるか、謝るか。
まぁ解けないっていうんだろうけど...
「いいですよ」
だから咲が好きだ。
真っ向から売られたけんかを買いやがった...!
黒板を指さしていた先生の行動と、
咲の言ったyes、は聞き取れたらしく教室がざわめく。
「まじか!?」
「あの問題、ならってねーよな!?」
「おい翔太たちわかるか?」
小さい声で、話しかけてきた。
いつもなら咎める先生も、
今は咲を陥れることに夢中だ。
目をすがめるようにして問題を読む...けど。
「...いや、俺は微妙。」
そう言ってから、
「わかんねぇ。」
そう付け足した。
文の作りはわかるけど...
あの単語、なんだ?
長ったらしい単語は見たことが無いものだ。
何かの専門用語か...?
「...俺も。」
斜め前で龍也もそう答えて、
教室のざわめきが強くなった。
「うそだろ!?
学年トップの
翔太と龍也が分かんないのか!?」
立ち上がろうとしていた咲を振り向くと、
「咲希ちゃん。
あの人、問題解けへんと
あり得へん量の雑用やらせたりとか、
生徒にセクハラしとったりするで?」
心配そうにそう告げた。
フッと笑ってその言葉に応えると
「急ぎなさい!!」
と叫んだ先生の言葉に立ち上がった咲。
凛としたその立ち姿に、
騒いでいたはずのクラスがシンッと静かになる。
黒板の前でチョークを手にしてから固まる咲。