鈴が咲く【前編】
「俺はもう読み終わったから。
貸すよ。」

「いいの!?
ありがとう!」

そう言って笑う。

「あ、佐島君は何か読みたい本ある?
持ってたら貸そうか?」

「あ~...
香林がこないだ読んでた、
「雪」...だっけ?
あれがいい。」

「うん、いいよ!
あの東京文書のやつね!」

「あぁ。」

そう言いながら、寮への道を歩いていく。

ガサッ

近くの木が不自然に揺れた。




勢いよくそちらを向くと。
カメラを構えた男の子が、
こちらをむいていた。



「な!?」

「おい、お前!」

佐島君が逃げた男の子を追って
走って行く。



一人、取り残されてしまった。
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