鈴が咲く【前編】
翔太side




龍也から咲がいなくなったと
電話があってから、
もう十五分が過ぎていた。


「悪い。不審な奴だったから追いかけたんだが...
見失った。罠だったみたいだ。」


焦ったように話す龍也の声が、
耳から離れない。

龍也があんなに焦っているなんて...




咲がいなくなった場所を中心に、
さっきから走りまわっている。



咲...無事でいてくれ...!

そう思いながら他学年の寮の前を通る、と
かすかに、物音がした。


ガシャッ



誰かいるのか...?

寮の裏の方に向かって走り出す。


そこで目にしたのは...








ふらふらで傷だらけの咲の姿だった。

「咲!」


そう叫んで、咲の前に立つ。




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