鈴が咲く【前編】
最近は、
人がいっぱい来ることもなくて安心。
「香林。
こないだの本なんだけど..」
「あ、うん。
今日の夜に貸すね?」
「サンキュ」
そう言って
笑っている佐島君。
初めて会った時は
近寄りがたい雰囲気があったけど、
今は全然違う。
本の話とかしてるから、
もしかしたら
一番話してるかもしれないなぁ...
そう思いながら、
騒いでいる目の前の3人を見る。
「っ!?」
思わず立ち止まる。
あの目は…!!
「?
香林?」
っちがう、今の私は“香林咲希”
あの人を怖がる理由はそれじゃない
色んな感情が私を支配しようと入り混じる。
冷静な自分が、他の人に見せるように
そっ...と左腕をかばうように触った。