鈴が咲く【前編】
「?...っ!」
私の目線の先を
探っていた佐島君が、気づいた。
グイッ
腕を引っ張られて、佐島君に近づく。
「目、合わせんな。
大丈夫だから」
そう言って靴箱まで
私をかばうように立ちながら、歩いていく。
まだ翔たちは、気づいてない...
あの男の子の存在に...
不安
痛み
孤独感
恐怖...
現実を冷静に見ようとする自分と
過去に囚われてる自分と
演じようとしている自分が
ごちゃまぜになる。
感情だけが、渦巻く。
靴を履き替えて、
みんなのところまで歩いた。
「!?」
急に佐島君が私の腕を掴んで
走り出す。
「さ、佐島君!?」
声をかけても、無言のまま。
3人をおいて、
どこに行くのか知らないまま走っていた。