鈴が咲く【前編】


「?...っ!」



私の目線の先を
探っていた佐島君が、気づいた。

グイッ


腕を引っ張られて、佐島君に近づく。

「目、合わせんな。
大丈夫だから」

そう言って靴箱まで
私をかばうように立ちながら、歩いていく。



まだ翔たちは、気づいてない...
あの男の子の存在に...





不安

痛み

孤独感




恐怖...

現実を冷静に見ようとする自分と
過去に囚われてる自分と
演じようとしている自分が
ごちゃまぜになる。



感情だけが、渦巻く。

靴を履き替えて、
みんなのところまで歩いた。

「!?」

急に佐島君が私の腕を掴んで
走り出す。

「さ、佐島君!?」

声をかけても、無言のまま。




3人をおいて、
どこに行くのか知らないまま走っていた。



< 200 / 568 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop